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労災 様式8号の書き方と記入例|初めてでも安心の完全ガイド

最終更新日2025.7.10(公開日:2025.7.10)
監修者:営業責任者 渥美

申請書類記載のイメージ

労災保険給付の申請に必要な「様式8号(療養補償給付請求書)」。初めて記入する方にとっては、専門用語や記入欄の多さに戸惑うことが少なくありません。本記事では、労災の様式8号の基本から実際の記入例まで、申請をスムーズに行うために必要な情報をわかりやすく解説します。
申請漏れや記入ミスによる給付の遅れを防ぎ、補償を受けるためのポイントを社会保険労務士の視点からお伝えします。

労災 様式8号とは?基本知識と重要性

労災保険制度において、様式8号は正式名称を「療養補償給付たる療養の給付請求書」といい、労働者が業務上または通勤途中で負傷したり、疾病にかかった際に、無料で治療を受けるために使用する請求書です。労災保険の給付を受けるための最初のステップとなる重要な書類で、通称「8号様式」「労災の様式8号」などと呼ばれることがあります。

この様式8号の提出により、労災指定医療機関での治療費が労働基準監督署から直接医療機関に支払われる仕組みとなっています。つまり、正確に記入して提出することで、労働者は自己負担なく必要な医療を受けることができます。

労災保険の申請には複数の書類がありますが、様式8号は初診時に医療機関に提出する基本書類であり、治療の経済的負担を軽減するための最初の手続きとなります。誤った記入や提出の遅れは、給付の遅延や場合によっては申請却下につながる可能性があるため、正確な記入と期限内の提出が重要です。

様式8号が必要になるケースと申請のタイミング

様式8号が必要となるのは、主に以下のようなケースです:

1.業務中の事故やケガ工場での機械操作中のケガ、事務所での転倒など

2.業務が原因となる疾病長時間のPC作業による腱鞘炎、過重労働によるうつ病など

3.通勤途中の事故会社への行き帰りの交通事故や転倒などによるケガ

労災保険の申請において、初診を受けた医療機関に様式8号を提出することが求められますが、事故から14日以内に受診することが望ましいとされています。ただし、14日を過ぎても申請は可能です。遅れる場合、証明のために追加資料が必要となる場合があります。
14日を超えた場合でも申請自体は可能ですが、事故と治療の因果関係の証明が難しくなる場合があります。

特に注意が必要なのは、最初は軽いケガだと思って自己負担で治療していたが、後に症状が悪化したケースです。このような場合でも、業務との因果関係が認められれば遡って労災申請が可能ですが、証明のための資料(業務記録、目撃者の証言など)を準備する必要があります。

申請の流れとしては、まず労働者が事業主に労災事故の発生を報告し、事業主から様式8号を受け取って必要事項を記入した後、事業主の証明を受けて医療機関に提出するという手順になります。

様式8号の入手方法と準備すべき書類

様式8号を入手する主な方法は以下の3つです:

1.事業主(会社)から受け取る多くの企業では総務部や人事部で様式を管理しています

2.労働基準監督署で直接受け取る最寄りの監督署の窓口で入手可能です

3.厚生労働省のウェブサイトからダウンロードPDF形式でダウンロードして印刷できます

様式8号の申請に際して、準備しておくべき情報や書類は以下の通りです:

本人確認書類健康保険証や運転免許証など

マイナンバー給付金の支給に必要となる場合があります

事故発生状況の詳細日時、場所、状況などを記録したメモ

目撃者情報について目撃者がいる場合は氏名と連絡先だけでなく、目撃者が目撃した具体的な事実についても記載することが推奨されます。

医師の診断内容診断書がある場合はその写し

特に事故発生状況については、できるだけ詳細に記録しておくことが重要です。「いつ、どこで、何をしていたときに、どのように負傷したか」という基本情報に加え、写真や図面があればより状況が明確になります。

また、通勤災害の申請時には、普段の通勤経路や、経路変更の理由について記載することが求められます。特に、経路変更の理由が適切でない場合は、申請が却下されることがあります。

様式8号の記入方法|項目別の詳細解説

様式8号の記入には細心の注意が必要です。ここでは主要な項目ごとに記入のポイントを解説します。

請求人に関する項目の記入ポイント

様式8号の上部には請求人(労働者本人)に関する情報を記入します:

氏名・生年月日戸籍に記載された正式な氏名を記入。外国人の場合はアルファベット表記も可

住所現在の居住地を記入。アパート・マンション名まで正確に

電話番号日中連絡がつく番号を記入

職種具体的な業務内容がわかるように記入(例:「会社員」ではなく「経理事務」など)

傷病名医師の診断に基づいた正確な病名を記入

請求人の情報は給付金の支給や連絡に使用されるため、特に住所変更があった場合は最新の情報を記入することが重要です。また、マイナンバーの記入欄がある場合は、個人番号(12桁)を正確に記入しましょう。

記入例:

氏名横浜 太郎
生年月日平成2年4月1日
住所神奈川県横浜市○○区○○通○番地 ○マンション101号
職種建設作業員(型枠工)

事業主に関する項目の記入例

事業主に関する情報は、労働者が所属する企業の詳細を記入します:

事業場の名称・所在地正式な会社名と本社または勤務地の住所

労働保険番号については、労災保険の対象となる事業主が所属する企業の番号です。社内で確認できない場合は、管轄の労働基準監督署に確認が必要です

事業主の証明事業主または人事担当者の押印が必要

特に労働保険番号は正確に記入する必要があります。番号がわからない場合は必ず会社の担当者に確認しましょう。また、派遣社員の場合は、派遣元の情報を記入することになります。

事業主の証明は、事故が業務上または通勤途中に発生したことを証明するものですが、事業主が事故の発生を確認し、その内容を証明する書類としても重要です。
記入後は速やかに事業主に確認と押印を依頼しましょう。

記入例:

事業場の名称株式会社横浜建設
所在地神奈川県横浜市○○区○○1-1-1
労働保険番号14-123456-7

負傷や疾病に関する項目の正確な記入方法

負傷や疾病に関する項目は、労災認定の判断材料となる最も重要な部分です:

負傷または発症年月日事故発生日または症状が現れた日を正確に記入

時刻は24時間表記で記入しますが、もし正確な時刻がわからない場合は、おおよその時間を記入することも認められています。

負傷または発症の場所具体的な住所または場所を記入

負傷または発症の状況については、できるだけ詳細に記入してください。具体的には、事故発生時の状況、負傷の様子、周囲の環境などを含めて記入することが求められます。

特に「負傷または発症の状況」の欄は、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して記入すると明確になります。例えば「落下物によるケガ」ではなく、「2階建て足場の組立作業中、上部から落下してきた金具(約500g)が右手甲に当たり、裂傷を負った」というように具体的に記述します。

また、通勤災害の場合は、普段の通勤経路であることや、経路の逸脱・中断がある場合はその合理的理由(例:日用品の購入、病院への立ち寄りなど)も記載する必要があります。

記入例(業務災害の場合):

負傷年月日令和7年4月15日
負傷時刻10時45分頃
負傷場所神奈川県横浜市○○区○○町△-△-1 ――ビル建設現場3階
負傷状況鉄筋組立作業中、バランスを崩して足場から約1メートル下に転落し、右足首を捻った。

記入例(通勤災害の場合)

負傷年月日令和7年4月15日
負傷時刻8時30分頃
負傷場所神奈川県横浜市○○区○○2-5付近の横断歩道
負傷状況自宅から最寄り駅へ向かう途中、信号のある横断歩道を青信号で渡っていたところ、右折してきた自動車にはねられ、左膝を負傷した。

様式8号の記入例|よくあるケース別の具体例

実際の申請をイメージしやすいよう、代表的なケースにおける様式8号の記入例を紹介します。

ケース1:工場での業務中の事故

請求人情報

氏名横浜 一郎
生年月日昭和55年5月5日
住所神奈川県横浜市○○区○○3-1-1
職種製造作業員(プレス機オペレーター)

負傷情報

負傷年月日令和7年3月10日
負傷時刻14時20分頃
負傷場所神奈川県横浜市○○区○○町1-1 株式会社○○製作所 第二工場
傷病名右手第2指挫傷
負傷状況金属部品のプレス加工作業中、材料の位置を調整しようとした際に、誤って起動ボタンに触れてしまい、プレス機に右手人差し指を挟まれた。安全装置は作動していたが、指先が届く位置にあった。

ケース2:オフィスワーカーの腱鞘炎(業務上疾病)

請求人情報

氏名横浜 花子
生年月日平成2年10月10日
住所神奈川県横浜市○○区○○3-3-3
職種一般事務(経理担当)

発症情報

発症年月日令和7年2月15日(症状自覚)
発症時刻終日
発症場所神奈川県横浜市○○区○○2-2-2 横浜○○ビル5階 株式会社○○商事
傷病名右手腱鞘炎
発症状況決算期の残業が続き、2週間にわたり1日平均12時間のパソコン入力作業を継続。2月10日頃から右手首に痛みを感じ始め、2月15日には激痛で作業が困難になった。医師からは「長時間の反復作業による腱鞘炎」と診断された。

ケース3:通勤途中の交通事故

請求人情報

氏名横浜 次郎
生年月日昭和60年7月7日
住所神奈川県横浜市○○区○○町1-1-1
職種営業(外勤)

負傷情報

負傷年月日令和7年4月5日
負傷時刻8時45分頃
負傷場所神奈川県横浜市○○区○○1丁目交差点
傷病名左脚打撲、頸部捻挫
負傷状況自宅から最寄り駅(相鉄線星川駅)へ自転車で向かう途中、交差点を青信号で直進していたところ、左方から信号無視で進入してきた自動車と衝突。転倒して左脚を強打し、さらに頸部を捻った。この経路は普段から通勤に利用している経路である。

これらの記入例は一般的なケースを想定したものです。実際の申請では、個々の状況に応じて具体的かつ正確な記入が求められます。特に「負傷または発症の状況」は、労災認定の重要な判断材料となるため、事実に基づいて詳細に記述することが重要です。

様式8号提出後の流れと注意点

様式8号を医療機関に提出した後の流れと、申請者が知っておくべき注意点について解説します。

提出後の処理フロー

1.医療機関での受理医療機関は様式8号を受け取り、必要事項を記入後、労働基準監督署に送付します

2.労働基準監督署での審査提出された書類をもとに、業務上または通勤による災害かどうかを審査します

3.調査の実施必要に応じて労働基準監督署から事業主や本人に対して追加の調査が行われることがあります

4.認定結果の通知審査の結果、労災と認定されれば「療養補償給付支給決定通知書」が発行されます

通常、明らかな業務災害や通勤災害であれば1〜2週間程度で認定されますが、因果関係の判断が難しいケースでは1〜3ヶ月以上かかることもあります。

申請後の注意点

治療経過の記録症状の変化や通院歴などを記録しておくことをお勧めします

転院する場合他の医療機関に転院する際は、新たに様式8号の提出が必要になります

症状が長引く場合療養期間が長期にわたる場合は、休業補償給付(様式第8号の3)の申請も検討しましょう

治療費の一時立替自己負担で治療費を支払った場合、療養補償の請求に必要な「療養の費用の請求書」(様式第7号)を提出し、払い戻しを請求することができます。なお、治療が労災として認められた後に支払った費用が対象となります。

また、治療中は定期的に労働基準監督署から状況確認の連絡が入ることがあります。その際は誠実に対応し、必要な情報を提供することが大切です。

よくある記入ミスと対処法

様式8号の記入でよく見られるミスと、その対処方法をまとめました。

1.日付・時間の誤り

よくあるミス

事故発生日や時間を正確に記憶していなかったり、申請日と混同するケース。 対処法:事故発生後すぐにメモや写真で記録しておく。目撃者がいれば確認を取る。

2.負傷状況の記載不足

よくあるミス

「転倒してケガをした」など、具体性に欠ける記述。 対処法:5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して詳細に記述する。

3.事業主証明の不備

よくあるミス

事業主の証明印がない、または証明内容が不十分。 対処法:記入後は速やかに事業主に確認と押印を依頼。不明点があれば人事部門に相談。

4.通勤経路の説明不足

よくあるミス

通勤災害の場合、普段の経路であることや逸脱・中断の理由が不明確。 対処法:普段の通勤経路を地図で示し、経路変更があった場合はその合理的理由を明記。

5.業務との因果関係の説明不足

よくあるミス

特に業務上疾病の場合、業務と発症の因果関係が不明確。 対処法:業務内容、労働時間、作業環境などを詳細に記載。医師の意見書があれば添付。

記入ミスに気づいた場合、訂正方法を確認し、必要であれば再提出を依頼してください。訂正には、訂正印を押すか、新たに書き直す必要がある場合があります。

既に提出済みの場合は、労働基準監督署または医療機関に連絡して訂正の方法を確認しましょう。単純な誤記であれば、二重線で消して訂正印を押す方法が一般的ですが、内容によっては再提出が必要なケースもあります。

まとめ|様式8号申請をスムーズに行うためのチェックポイント

労災の様式8号の申請は治療を受け、必要な補償を得るための重要なステップです。最後に、スムーズな申請のためのチェックポイントをまとめます。

申請前のチェックポイント

  • 事故発生直後に状況(日時、場所、状況など)を記録したか
  • 事業主(会社)に事故の報告をしたか
  • 様式8号を入手し、記入に必要な情報を集めたか
  • 医療機関が労災指定医療機関であることを確認したか

記入時のチェックポイント

  • 請求人の情報(氏名、住所、生年月日など)は正確か
  • 事業主の情報(事業場名、所在地、労働保険番号)は正確か
  • 負傷・疾病の状況は具体的かつ詳細に記入したか
  • 通勤災害の場合、通常の経路であることを明記したか
  • 業務上疾病の場合、業務との因果関係を明確に記述したか
  • 事業主の証明(押印)を受けたか

提出後のチェックポイント

  • 控えのコピーを保管しているか
  • 療養の経過や通院記録を記録しているか
  • 労働基準監督署からの連絡に対応する準備はあるか
  • 症状が長引く場合の休業補償申請について確認したか

労災保険は労働者を守るための重要な制度です。様式8号の申請によって、医療費の心配なく治療に専念できます。特に初めて申請する方は手続きに不安を感じるかもしれませんが、この記事の情報を参考に、正確な記入を心がけましょう。

また、申請に不安がある場合は、会社の総務・人事部門や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家のサポートを受けることで、より円滑な申請が可能になります。

万が一の労災事故に備え、日頃から安全な職場環境の維持と、労災保険制度への理解を深めておくことが大切です。

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