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社会保険加入義務:企業と従業員が知っておくべき基礎知識

最終更新日2024.10.7(公開日:2024.10.7)
監修者:営業責任者 渥美

怪我で入院中の男性

社会保険加入義務とは

社会保険加入義務とは、法律で定められた条件を満たす事業所と従業員に対して、健康保険と厚生年金保険への加入を義務付ける制度です。
この制度は、労働者とその家族の生活を保障し、安定した社会を維持するための重要な仕組みです。

例えば、従業員が病気やけがで働けなくなった場合の医療費や休業補償、老後の年金受給などが、社会保険によってカバーされます。
一方で、企業にとっては法令順守と従業員の福利厚生の観点から重要な責務となります。

社会保険加入が義務付けられる条件

1. 事業所の条件

以下のいずれかの条件を満たす事業所は、原則として社会保険への加入が義務付けられます。

  • 従業員数に関わらず全て法人事業所で要件を満たす場合
    社長のみでも役員報酬発生するのならば社会保険の新規適用、社会保険加入が必要であり、逆に社長のみで、役員報酬がなければ新規適用、加入もできません。詳しい要件は後述します。
  • 常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所
    個人事業所であっても、常時5人以上の従業員を雇用する場合は社会保険に加入する義務があります。

2. 従業員の条件

以下の条件を満たす従業員は、社会保険に加入する必要があります。

  • ・2か月を超える雇用の見込みがある
  • ・1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上のパート・アルバイト
  • ・2か月を超える雇用見込みがあり、週30時間以上働く短時間労働者(2024年10月から段階的に適用拡大により、従業員51名以上は週20時間以上で加入要件を満たす)

社会保険の加入義務判断基準

社会保険加入義務の判断は、主に以下の基準に基づいて行われます。

条件                 基準
-------------------|-------------------------------------------
週の労働時間        | 30時間以上(フルタイム労働者の4分の3以上)
月の労働日数        | 概ね15日以上(フルタイム労働者の4分の3以上)
年収                | 106万円以上(2024年時点、毎年改定あり)
雇用期間            | 2か月を超える見込みがある

加入義務違反のリスク

社会保険加入義務に違反した場合、企業は以下のようなリスクに直面する可能性があります。

  • ・最大2年間の遡及加入と保険料の一括納付命令
  • ・社会保険の加入逃れによる従業員からの訴訟リスク
  • ・従業員からの信用失墜
  • ・罰金刑(健康保険法違反で最大50万円、厚生年金保険法違反で最大100万円)

よくある質問(Q&A)

  • Q

    パートタイマーでも社会保険に加入する必要がありますか?

    A

    はい、一定の条件を満たすパートタイマーは加入義務があります。週の労働時間が30時間以上(従業員51名以上は週20時間以上)で、2か月を超える雇用見込みがある場合、原則として加入が必要です。

  • Q

    従業員が加入を希望しない場合はどうすればよいですか?

    A

    加入条件を満たす場合、従業員の意思に関わらず加入させる必要があります。加入は法的義務であり、個人の選択はできません。

  • Q

    外国人従業員も社会保険に加入する必要がありますか?

    A

    はい、在留資格や国籍に関わらず、加入条件を満たす外国人従業員も社会保険に加入する必要があります。

  • Q

    大入り袋は、社会保険料の対象外と見たことがありますが、それなら賞与を大入り袋で支給すれば、社会保険料の対象外になるのでしょうか?

    A

    いいえ、対象外とはなりません。
    実態が賞与であれば、単に支給項目を大入り袋と変更しただけでは対象外とはなりません。

    賞与を支給するとその額に応じた社会保険料が発生して、会社の負担額が増えます。
    この負担額は大きく、会社はなんとかして社会保険料が発生しないようにと考えてしまいます。

    日本年金機構のホームページにも記載さている通り、大入り袋は報酬に含めなくてよいので、社会保険料の対象外です。
    しかし、報酬に含めなくてもより大入り袋に該当するのは、「臨時的で、さらに定期的でないもの」に限られています。
    つまり、「支払われる時期が毎年1月と7月という感じで決まっていて、毎年支払われるもの」は、大入り袋とはならず報酬となり、社会保険料が発生するということになります。

    臨時給与の例として、他にも日本年金機構は以下のようなものを例示しています。

    <標準報酬月額の計算に含まれないもの>
    ・大入袋
    ・見舞金
    ・解雇予告手当
    ・退職手当
    ・出張旅費
    ・慶弔費
    ・傷病手当金
    ・労災保険の休業補償給付
    ・現物支給の制服・作業服
    ・見舞い品
    などです。

    この定義から分かることは「労働の対価」であるものが社会保険の対象となっています。労働した対価として受ける報酬のことを意味し、過去の労働に限らず、将来の労働も含めた労働です。会社が恩恵的に支給する見舞金、出張旅費などは労働の対価とは言えないため社会保険上は給与や賞与には含まれません。

  • Q

    病気で長期間療養が必要になり、休職している社員がいます。
    無給となっているので、社会保険料が免除されたりしませんか?

    A

    結論から言うと、免除にはなりません。休職前と同じ社会保険料の負担が求められます。「給料が下がるなら、社会保険料も下がるのでは?」と疑問に思うかもしれませんが、社会保険料は下がりません。

    昇給や降給で変わることもありますが、休職は対象外です。しかし、他の控除される金額もそのままではありません。給与に対して計算される雇用保険料、所得税は0円になります。

    また、覚えておきたいのが、健康保険の「傷病手当金」制度です。病気やケガで会社を休んだ時に、加入者と家族の生活を保障するために、健康保険から手当金が支給される制度で、おおまかにお伝えすると「月給の3分の2」が支給され、非課税です。

    「働けないこと医師が証明」「休職中給与の支払いが無いこと」等いくつか条件がありますが、毎月負担していた社会保険料が、こういう時に助けてくれます。

社会保険労務士への相談のメリット

社会保険加入義務に関して不明点がある場合、社会保険労務士に相談するメリットがあります。

  • ・最新の法改正情報に基づいた適切なアドバイスが得られる
  • ・個別の事例に対する専門的な判断が可能
  • ・加入手続きの代行により、事務負担を軽減できる
  • ・将来的なリスク回避のための戦略的なアドバイスが得られる

まとめ:社会保険加入義務チェックリスト

  • □ 事業所が法人または常時5人以上の従業員を雇用する個人事業主であることを確認
  • □ パート・アルバイトの労働時間と雇用期間を確認
  • □ 短時間労働者の社会保険加入要件を満たしているか確認
  • □ 新規雇用時に社会保険加入手続きを行っているか確認
  • □ 定期的に従業員の労働条件を見直し、加入要件の変更がないか確認
  • □ 社会保険に関する最新の法改正情報を把握
  • □ 不明点がある場合、社会保険労務士や年金事務所に相談

社会保険加入義務を適切に理解し遵守することは、企業の法令順守と従業員の福利厚生の両面で重要です。
特に、パートタイマーや短時間労働者の加入条件については、近年の法改正により変更が加えられているため、最新の情報を常に把握しておく必要があります。

適切な社会保険加入を行わないと、従業員の安心と企業の信頼性を損ねる可能性があります。法的義務を果たすだけでなく、従業員が安心して働ける環境を整えることで、長期的には生産性の向上や優秀な人材の確保にもつながるのです。
社会保険加入義務は、企業と従業員の双方にとって重要な社会的責任の一つと言えるでしょう。

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