最終更新日2025.5.15(公開日:2025.5.15)
監修者:営業責任者 渥美
合同会社(LLC)を設立したものの、「社会保険に加入する必要があるのか」「加入するとコストはいくらかかるのか」「加入しないとどうなるのか」と疑問をお持ちではありませんか?
合同会社は株式会社と比べて合同会社は株式会社と比較して、設立費用やランニングコストが安く、意思決定が迅速にできるなどのメリットがあります。
具体的には、設立費用が安く、定款認証が不要、役員の任期制限がない、決算公告義務がないなどが挙げられるため人気の会社形態ですが、社会保険に関しては同じルールが適用されます。
本記事では、合同会社における社会保険の加入義務や手続き、保険料の負担額、加入しない場合のリスクなど、経営者が知っておくべき基本的な情報をわかりやすく解説します。
合同会社も他の企業形態と同様に、日本の社会保険制度の対象となります。社会保険とは、主に「健康保険」と「厚生年金保険」の2つを指し、労働者とその家族の医療や老後の生活を保障するための制度です。
健康保険は、従業員やその家族が病気やケガをした際の医療費を保障するものです。一般的に医療費の7割が保険でカバーされるため、患者の自己負担は3割となります。また、高額な医療費がかかった場合には「高額療養費制度」によって自己負担額に上限が設けられています。
厚生年金保険は、従業員の老後の生活を保障するための年金制度です。将来、加入者が年金受給年齢に達すると、納付した保険料に基づいて年金が支給されます。また、障害を負った場合や死亡した場合にも、障害年金や遺族年金として給付を受けることができます。
合同会社の特徴である有限責任制や内部自治の柔軟性は、社会保険の加入義務には影響しません。会社の形態に関わらず、法人として従業員を雇用する以上、社会保険の適用対象となるのです。
合同会社が社会保険に加入すべき条件は、主に以下の通りです:
1.法人の場合法人であれば、従業員数に関わらず社会保険への加入が原則として義務付けられています。合同会社は法人格を持つため、基本的には全ての合同会社が対象となります。
2.常時使用する従業員の存在従業員を常時使用(正社員や一定の条件を満たすパート・アルバイト)している場合は加入義務があります。
3.従業員数による基準2025年4月現在、健康保険・厚生年金保険は原則として従業員1人以上の事業所に適用されますが、一部の業種や地域では従業員5人未満の事業所は任意適用となることがあります。
4.労働時間と賃金による条件パートタイマーやアルバイトでも、週の所定労働時間が通常の従業員の4分の3以上、または週20時間以上で月額賃金が8.8万円以上などの条件を満たす場合は、社会保険の加入対象となります。
重要なのは、「法人成り」した合同会社の場合でも、代表社員(経営者)一人だけの会社であっても、原則として社会保険の適用対象となる点です。個人事業主が「法人成り」して合同会社を設立した場合、社会保険への加入が必要になるのは大きな変化の一つと言えるでしょう。
実際に、東京都内で飲食店を経営していた個人事業主Aさんが合同会社化した際、「法人になったから社会保険に加入しなければならない」と知り、毎月の固定費が増えることに驚いたというケースもあります。しかし、法人化による信用力の向上や税制上のメリットなどを考慮すると、社会保険加入の費用は必要な投資と考えることができます。
社会保険料は事業主(合同会社)と従業員で折半するのが基本的なルールです。具体的な負担割合は以下の通りです:
健康保険料事業主と従業員がそれぞれ50%ずつ負担
厚生年金保険料事業主と従業員がそれぞれ50%ずつ負担
介護保険料(40歳以上65歳未満の従業員のみ)事業主と従業員がそれぞれ50%ずつ負担
子ども・子育て拠出金事業主が100%負担
このように、社会保険料の大部分は労使折半となりますが、子ども・子育て拠出金のように事業主のみが負担する部分もあります。合同会社の経営者としては、自社負担分はもちろん、従業員負担分も含めた全体的なコスト感を把握しておくことが重要です。
社会保険は強制加入の制度であるため、加入要件を満たしているにもかかわらず加入しない場合、様々な法的リスクがあります:
社会保険料の遡及納付未加入期間が発覚した場合、最長2年分の保険料を遡って納付する必要があります。
追徴金や延滞金遡及納付の際には、追徴金や延滞金が課される場合があります。
罰則健康保険法や厚生年金保険法では、加入義務を怠った事業主に対して、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
特に近年は、社会保険の加入指導が強化されており、従業員の告発や年金事務所の調査によって未加入が発覚するケースが増えています。建設業や飲食業などでは、業界全体で社会保険への加入促進の動きが強まっています。
社会保険に加入しないことは、従業員との関係にも悪影響を及ぼします:
給付を受けられないことへの不満従業員が病気やケガをした際に健康保険の給付を受けられず、全額自己負担となれば、不満や不信感につながります。
将来的な年金受給への不安厚生年金に加入していないと、将来受け取れる年金額が減少します。これは従業員の将来設計に大きな影響を与えます。
離職リスクの増大社会保険未加入の状態が続くと、良い条件の企業への転職を考える従業員が増える可能性があります。
また、採用活動においても、社会保険が完備されていないことはマイナスポイントとなります。特に優秀な人材ほど福利厚生を重視する傾向があり、社会保険の有無が採用競争力に直結することもあります。
合同会社の経営者(代表社員)自身にとっても、社会保険に加入しないことはリスクがあります:
国民健康保険と国民年金のみでは保障が不十分経営者が国民健康保険と国民年金のみに加入している場合、病気やケガで働けなくなったときの所得保障(傷病手当金)がないなど、保障内容が限定的です。
将来受け取る年金額の差厚生年金に加入していないと、将来受け取れる年金額が国民年金のみの場合と比べて大幅に少なくなります。
事業の信用低下取引先や金融機関との関係において、社会保険未加入は法令遵守の姿勢に疑問を持たれる原因となり、信用力の低下につながる可能性があります。
実際、合同会社Cの代表社員は、社会保険料の負担を避けるため加入を見送っていましたが、重い病気にかかり長期療養が必要になった際に傷病手当金を受け取れず、経済的に困窮したケースがあります。結果的に、節約したコスト以上の損失を被ることになったと言えるでしょう。
代表社員だけの合同会社でも加入義務はある?
代表社員のみ、代表社員が複数名であることもありますが、運営している合同会社の場合、社会保険の加入義務については役員報酬が発生している場合は社会保険の強制適用の対象になります。
役員報酬が誰も発生しておらず、従業員もいない場合は社会保険を適用できません。
合同会社における社会保険について、主なポイントを整理しましょう:
加入義務合同会社も法人として社会保険の加入対象であり、従業員を雇用している場合は原則として加入義務があります。
コスト負担社会保険料は事業主と従業員で折半するのが基本で、月給30万円の従業員1人あたり事業主負担は月額約4.4万円となります。
加入しないリスク未加入のまま経営を続けると、法的罰則や追徴金、従業員との関係悪化、経営者自身の保障不足など様々なリスクがあります。
コスト管理の方法適用除外制度の活用や助成金の利用など、法令の範囲内でコストを管理する方法があります。
社会保険に加入することは、短期的にはコスト増につながりますが、長期的には以下のようなメリットをもたらします:
合同会社の経営者は、これらのメリットとコストのバランスを考慮しながら、自社の経営状況に合わせた対応を取ることが重要です。
社会保険の手続きや制度の活用方法については、専門知識を持つ社会保険労務士に相談することで、最適な選択ができるでしょう。
社会保険は単なるコストではなく、会社と従業員の将来を守るための重要な投資と考え対応していきましょう。
不安や疑問があれば、専門家に相談することをお勧めします。
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