是正勧告を受けるとどうなるのか
最終更新日:2022.11.11(公開日:2022.11.11) / 監修者:営業責任者 渥美
是正勧告を受けるとどうなるのか

最終更新日2024.3.11(公開日:2022.11.11)
監修者:営業責任者 渥美

是正勧告とは、労働基準監督署が調査に入り、法令に反する部分が見つかった場合、改善するよう勧告することです。
是正勧告を受けるとどうなるのでしょうか。
対応の仕方次第で、最悪の場合は逮捕されてしまいます。
それでは是正勧告を受けるとどうなるのか、是正勧告の内容について解説していきます。

是正勧告を受けるとどうなるのか

是正勧告とは?

労働基準監督署が調査の結果、法令違反を確認した際、是正するよう勧告することです。
是正勧告を受けた場合、速やかな是正措置が必要です。つまり、労務上の問題に対処するための具体的な行動や手段を講じなければいけません。
是正とは、労働基準法違反などの法令違反状態を改善し、適正な状態に戻すことです。
勧告とは、処置を勧める行政指導のことです。
勧告は、以下の手順で行われます。

  • 調査: 労働基準監督官が事業所を調査し、法令違反の有無を確認します。
  • 指摘: 労働基準監督官が事業主に法令違反を指摘します。

是正勧告は、事業主に法令を遵守する義務があることを再認識させるものであり、従わない場合は労働基準法違反として罰則が科される可能性があります。
その内容と理由について説明していきます。

1 どんな時に労働基準監督署の調査が入るのか

以下の場合、労働基準監督署の調査が入ります。
労基署の調査が入る時はどんな時か挙げていきます。

  • (1)従業員が労働基準監督署へ申告・相談をしたことによる申告監査
  • (2)労働基準監督署が特定の企業や業種を絞って抜き打ち監査
  • (3)重大な労災が発生した時の原因究明のための監査
  • (4)既に是正勧告を受けていた場合のその後の監査

2 調査に対する事前準備

調査に対する事前準備は、調査が入る直前に対応できることは多くありません。
調査が入った時に必ず確認されるものがあります。
労働条件通知書の交付状況や雇用契約書の締結確認、就業規則、有給の取得状況など含め勤怠の記録、36協定などの労使協定、賃金台帳など綿密に調べられます。

顧問社労士などがいない場合は、どの項目かで引っかかることが非常に多いです。
以上に挙げた調査項目がしっかり整備されていることが大前提となります。
付け焼刃でできるものではないので、労務の仕組みづくりが出来ていないと対応できないものが多く、是正勧告を避けられない状況になりがちです。

3 是正勧告に従わないとどんな罰則がある?

是正勧告に対して無視をし続ける、嘘の是正報告をした場合には逮捕、起訴される可能性もあります。
「勧告」とは措置などを勧め、促すことです。即ち、是正勧告は違反を正すよう措置を講じ、是正することを勧め促す行政指導なのです。
よって、是正勧告を放置したとしても刑罰に問うことはできません。
しかし、是正勧告を放置し続け労働基準法違反の事実が明らかになった場合、司法警察官である労働基準監督官が刑事告訴を行う可能性があります。その結果、労働基準法違反で起訴され、有罪判決を受ける可能性があります。
また、是正勧告を放置することは、企業の社会的信用を損なうことにもつながります。
ニュースなどで法人名などが実名公表され、事業停止命令が出ることもあります。
労働基準法違反が明るみに出れば、顧客や取引先からの信頼を失う可能性も考えられます。
したがって、是正勧告を受けたら真摯に受け止め、速やかに是正措置を講じることが重要です。

実際に起訴されたケースを2つ挙げます。

ケース 1

会社  : 東京都内の警備会社
違反内容: 従業員に時間外労働をさせていたが、割増賃金の支払いをしていなかった
是正勧告: 労基署から是正勧告を受けたが、無視
起訴  : 東京地方検察庁が、労働基準法違反の疑いで会社を起訴

ケース 2

会社  : 大阪府内の運送会社
違反内容: 従業員に長時間労働をさせていたが、休憩時間を与えていなかった
是正勧告: 労基署から是正勧告を受けたが、無視
起訴  : 大阪地方検察庁が、労働基準法違反の疑いで会社を起訴

労働基準法第101条には「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」
102条に「労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」とあります。

こういった「司法警察官」の勧告に対し、嘘の報告や法令違反に対する是正の意思がなければ、送検、起訴、有罪となる可能性があるというわけです。
今までどんなに素晴らしい会社運営を行っていようと、是正勧告が入っていることが周知されると社会的信頼感を損ないます。
是正勧告を見くびることなく、真摯に受け止め是正措置を講じていく必要があります。

4 労働環境を整備していくには

労働環境を整備していくためには、しっかりした労務回りの仕組みづくりが必要です。
一朝一夕で成せるものではありません。労働基準監督署の調査が入る時に、その会社に不備が見つかることは珍しくありません。代表すると以下の3つです。

(1)出勤簿や賃金台帳などの不備

勤怠管理を行っておらず出勤簿がない会社もありますが、勤怠管理は必ず行わなければなりません。出勤簿や賃金台帳がないことは労働法違反(労働基準法第109条違反)にあたります。
勤怠管理を行っていても直行直帰が多い会社などは勤怠の記録をできていないことが多くあります。
残業や有給の管理をしていないなど勤怠管理の不備や勤怠ルールに不備があることがあげられます。
賃金台帳も抜けや不備があったりすることがあります。 勤怠と照らし合わせて齟齬があることが第一に挙がります。
出勤簿と賃金台帳の齟齬には、以下のようなものがあります。

労働時間の差異

  • ・出勤簿には記載されているが、賃金台帳には反映されていない労働時間がある。
  • ・賃金台帳には記載されているが、出勤簿には記載されていない労働時間がある。
  • ・出勤簿と賃金台帳で、同一労働日の労働時間が異なる。

賃金の差異

  • ・出勤簿上の労働時間に対して、賃金台帳で支払われている賃金が低い。
  • ・賃金台帳上の賃金に対して、出勤簿上の労働時間が少ない。
  • ・出勤簿と賃金台帳で、同一労働日の賃金が異なる。

手当や控除の差異

  • ・出勤簿には記載されているが、賃金台帳には反映されていない手当や控除がある。
  • ・賃金台帳には記載されているが、出勤簿には記載されていない手当や控除がある。
  • ・出勤簿と賃金台帳で、同一手当や控除の金額が異なる。

その他の差異

  • ・出勤簿に記載されている従業員が、賃金台帳に記載されていない。
  • ・賃金台帳に記載されている従業員が、出勤簿に記載されていない。
  • ・出勤簿と賃金台帳で、従業員の氏名や生年月日が異なる。

出勤簿と賃金台帳の齟齬があると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • ・労働基準法違反(賃金の不払いなど)
  • ・労災保険や社会保険料の過少申告
  • ・税金の過少申告
  • ・従業員とのトラブル

そのため、出勤簿と賃金台帳は正確かつ整合性のあるものにすることが重要です。

(2)労働条件通知書、雇用契約書、就業規則などの不備

労働条件通知した内容と就業規則に記載された内容が整合していない。
就業規則を所轄の労働基準監督署に届出していない、従業員に周知していない、現行法に則ったものでない、となると効力がありません。
就業規則に紐づいていない労働条件通知書や雇用契約書も問題があります。

(3)労使協定の未締結

代表的なところですと36協定の未締結などが挙げられます。
36協定とは、労働基準法第36条に基づく、労働者と使用者が労働時間に関する労使協定を締結することを指します。
労働基準法第36条では、労働時間に関する協定を締結した場合は、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。
労働基準監督署は、36協定の届出に基づいて労働時間の適正な管理を監督します。違反があった場合は、是正指導や行政処分を受ける可能性があります。

これらのように、労務周りの仕組みづくりをするには知識と時間や工数がかかります。

まとめ

ここまで是正勧告を受けたらどうなるのかについて述べていきました。

以下にまとめますと、

①「是正勧告」とは労働基準監督署の調査により労働基準法などに反する項目があった場合に、問題項目を是正するよう勧告することです。

以下の場合、労働基準監督署の調査が入ります。

  • (1)従業員が労働基準監督署へ申告・相談をした場合
  • (2)労働基準監督署が特定の企業や業種を絞って抜き打ち
  • (3)重大な労災が発生した時の原因究明のため
  • (4)既に是正勧告を受けていた場合のその後の監査

上記のようなケースで労基署の調査が入ります。そこで問題が見つかった場合に是正勧告を受けます。

②調査に対する事前準備は、調査が入る時点で直前に対応できることは多くありません。

日頃から人事労務回りの整備を怠らないことが重要となります。

③是正勧告を無視し続ける、嘘の是正報告をした場合には逮捕、起訴される可能性もあります。

法令違反で是正勧告を受けているので、これに真摯に向かい合わないということは、お客様、従業員、世間などの信用を著しく失う結果につながります。速やかに措置を講じ是正していかなければなりません。

④労働環境を整備するにあたり、具体的にどうすればいいのか。

  • (1)出勤簿や賃金台帳などの管理の徹底
  • (2)労働条件通知書、雇用契約書、就業規則などの整備
  • (3)労使協定の締結

など是正勧告に対応するのは一筋縄ではいきません。プロの手を借り、速やかに対処することをオススメします。

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