最終更新日2025.9.4(公開日:2025.9.4)
監修者:営業責任者 渥美 瞬
監修協力:社会保険労務士 河守 勝彦
2025年8月4日、厚生労働省は全国の最低賃金を平均63円引き上げ、全国加重平均で1,118円となることを決定しました。
引き上げ時期については地域ごとに10月以降順次に引き上げられる予定です。
2025年度(令和7年度)の最低賃金は、全国加重平均で1,118円/時と、前年(1,055円)から63円の引き上げが見込まれています。
引き上げ幅は制度開始以来最大で、全国すべての都道府県で60円以上の上昇が予定されています。
政府は「全国平均1,500円」を目指す方針を掲げており、この流れは今後も続く見通しです。
最低賃金の引き上げは、単なる賃金修正にとどまらず、企業経営における人件費構造の見直しや労務管理体制の強化を迫る出来事です。
2025年度は、地域ランクに関わらず60円以上の引き上げが行われます。
例えば、東京は1,226円、神奈川は1,225円、大阪は1,177円となる見込みです。地方でも、秋田県1,015円、鹿児島県1,015円と、初めて1,000円台に到達する県が多数出ます。
■ランクについて
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
仮に時給1,050円のパート10名を雇用し、1,118円に引き上げた場合、1日8時間・月20日勤務で年間約1,152,000円の人件費増となります。
これに伴い、賞与や社会保険料も増加し、実質的な負担はさらに大きくなります。
最低賃金は時給だけでなく、月給制にも影響します。
例えば月給180,000円で所定労働時間が173.3時間の場合、時給換算は約1,038円となり、改定後の基準を下回ります。この場合、月給の引き上げが必要です。
最低賃金の上昇により、勤続年数の長い社員と新入社員・パートの賃金がほぼ同水準になるケースが増加しています。
これを放置すると、ベテラン社員の不満や離職を招く恐れがあります。
最低賃金を下回る賃金での雇用は労働基準法違反です。
違反が発覚すれば是正勧告や未払い賃金請求が発生し、遡及支払いに加えて遅延利息も発生する場合があります。
固定残業代は「基本給部分」が最低賃金以上であることが条件です。
例えば、総支給200,000円のうち固定残業代50,000円、基本給150,000円だと、基本給を時給換算して基準を下回らないか確認が必要です。
最低賃金引き上げを反映するだけでなく、以下の観点から規程を見直すことも必要になります。
賃金規程と整合性を保ちつつ、労働条件の変更に伴う規定修正が必要です。
具体的には、賃金改定時期、計算方法、端数処理方法などを明確化します。
勤怠管理・給与計算の自動化によって、残業削減や人事労務コストの抑制が可能です。こういった施策も必要とされるでしょう。
最低賃金引き上げに伴い、時間外労働の割増賃金額も増加します。
労働時間の可視化とシフト最適化が重要です
最低賃金の確認は、時給制だけでなく日給制・月給制社員も含めて行います。
従業員別に引き上げ後の給与を試算し、年間人件費増加額を算出します。
特に、パート比率が高い企業ではシフト編成や人員配置を見直す必要があります。
勤怠管理や給与計算を自動化し、間接コストを削減します。
繁忙時間帯に集中配置、閑散時間帯の削減で労働時間を効率化。
「業務改善助成金」や「人材開発支援助成金」を活用し、コスト増を緩和。
大都市圏では既に全国平均を大きく上回る水準のため、賃金逆転現象対策として職務給制度や評価制度の導入が進んでいます。
初の1,000円台到達により、農業・製造業・小売業のコスト増が顕著。パートから正社員への転換や多能工化で生産性向上を図る企業が増加。
最低賃金引き上げで人件費が増える場合、取引先や顧客への価格転嫁も検討が必要です。
項目 | 詳細 | 完了 |
---|---|---|
全従業員の時給換算額確認 | 月給者・日給者含む | |
最低賃金との差額確認 | 都道府県別基準額と照合 | |
賃金規程改定 | 基本給・手当・残業代制度見直し | |
就業規則改定 | 賃金改定条項・計算方法記載 | |
人件費試算 | 年間増加額を算出 | |
助成金活用 | 業務改善助成金申請準備 | |
価格転嫁計画 | 契約条件改定・単価交渉 |
2025年度の最低賃金大幅引き上げは、企業の人事・労務管理のあり方を根本から変える契機となります。
今後も引き上げ傾向は続くため、毎年の改定を前提にした賃金設計、人員計画、業務効率化、価格転嫁戦略を組み合わせることが必要です。
「早めの試算」「制度改定」「生産性向上」「助成金活用」という4つの柱を押さえることで、賃上げと経営の持続可能性を両立できます。
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