mudan-kekkin 無断欠勤への適切な対応と予防策:企業のためのガイドライン
無断欠勤への適切な対応と予防策:企業のためのガイドライン

最終更新日2025.3.11(公開日:2025.3.11)
監修者:営業責任者 渥美

頭をかかえ悩む会社員

はじめに

無断欠勤とは、従業員が事前の連絡や許可なく欠勤することを指します。この問題は、企業活動に悪影響を及ぼすだけでなく、職場の士気低下や他の従業員への負担増加など、複合的な問題を引き起こします。本ガイドラインでは、無断欠勤の予防から対応まで、法的観点を踏まえた実践的なアプローチを解説します。

無断欠勤の影響と原因

無断欠勤が発生すると、まず業務の遅延や生産性の低下という直接的な影響が生じます。さらに、他の従業員への負担増加、取引先との信頼関係への悪影響、プロジェクトスケジュールの遅延など、組織全体に波及する問題へと発展します。

無断欠勤の背景には、しばしば職場における人間関係の問題や過度な業務負担、メンタルヘルスの課題が潜んでいます。特に、コミュニケーション不足や職場環境の悪化は、従業員の就業意欲を低下させ、無断欠勤のリスクを高める要因となりえます。

予防のための体制整備

無断欠勤を防ぐためには、まず適切な制度設計が不可欠です。就業規則において無断欠勤の定義や報告手順、懲戒処分の基準を明確に規定することが重要です。また、ICカードやスマートフォンを活用した勤怠管理システムを導入し、異常な勤怠パターンを早期に検知できる体制を整えることが効果的です。

職場環境の整備も重要な予防策です。労働時間管理や有給休暇の取得促進、フレックスタイム制度の導入など、ワークライフバランスを重視した制度作りが求められます。労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェックの実施や、産業医との連携強化も、メンタルヘルスケアの観点から重要な取り組みとなります。

発生時の対応手順

無断欠勤が発生した場合、まず従業員の安否確認を最優先します。電話やメール、SMSなど、複数の手段で本人との連絡を試み、必要に応じて緊急連絡先への連絡や自宅訪問も検討します。同時に、発生時刻や状況、連絡試行の記録など、詳細な記録を作成することが重要です。

従業員が出社した際には、速やかに面談を実施し、無断欠勤の理由を丁寧に聴取します。この際、懲戒ありきではなく、従業員が抱える問題や必要なサポートを把握することに重点を置きます。面談内容や今後の改善計画については、必ず書面で記録を残し、本人の確認を得ておくことが望ましいです。

法的対応の考え方

無断欠勤への対応において、懲戒処分を検討する場合は、労働契約法第15条(懲戒権の濫用の禁止)を考慮する必要があります。処分は、口頭注意から始まり、書面による警告、減給(労働基準法第91条の制限内)、出勤停止、そして最終的な諭旨解雇・懲戒解雇まで、段階的に実施することが一般的です。

諭旨解雇とは、会社が従業員に対して退職勧奨を行い、従業員がそれに応じる形で退職する、懲戒処分の一種です。懲戒解雇よりは穏便な処分であり、従業員の将来への影響を考慮した温情的な措置と言えます。
特に解雇を検討する場合は、労働基準法第20条に基づく30日前の予告または予告手当の支払いが必要です。また、労働契約法第16条が定める「客観的で合理的な理由」の存在と、「社会通念上の相当性」の確保が不可欠となります。さらに、解雇回避のための努力を尽くしたことを示す必要があります。

無断欠勤の従業員を諭旨解雇とするまでの道筋は、一般的に以下のようになります。

1.事実確認

まず、従業員の無断欠勤の事実を確認します。欠勤日数、理由、連絡状況などを把握します。

2.事情聴取

従業員に無断欠勤の理由を聴取します。病気や事故など、やむを得ない事情がないか確認します。

3.指導・注意

無断欠勤の理由を考慮し、改善を促すための指導・注意を行います。
口頭だけでなく、書面で行うことも重要です。

4.懲戒処分検討

指導・注意後も改善が見られない場合、懲戒処分を検討します。
無断欠勤の程度や会社の就業規則に基づき、処分内容を決定します。

5.諭旨解雇の勧告

従業員に対して、諭旨解雇を勧告します。
諭旨解雇に応じるかどうかは従業員の自由ですが、応じない場合は懲戒解雇となる可能性を伝えます。

6.退職合意

従業員が諭旨解雇に応じた場合、退職合意書を作成し、合意内容を確認します。

7.退職手続き

退職合意に基づき、退職手続きを行います。

再発防止と職場環境の改善

再発防止には、組織全体での取り組みが重要です。管理職に対するメンタルヘルスマネジメント研修や、部下との効果的なコミュニケーション方法の指導を通じて、問題の早期発見・対応能力を向上させることが求められます。

同時に、個々の従業員に対するキャリア開発支援や健康管理支援も重要です。スキルアップ研修の提供やキャリアカウンセリングの実施、必要に応じた配置転換の検討など、従業員の成長をサポートする体制を整えることで、職場への定着と意欲向上を図ることができます。

まとめ

無断欠勤は、事前の予防策と状況に応じた適切な対応により、多くの場合は防ぐことが可能です。重要なのは、懲戒という観点だけでなく、従業員支援の視点を持って対応することです。本ガイドラインで示した施策を、自社の状況に応じて適切にカスタマイズし、実施することで、働きやすい職場環境の実現と企業の生産性向上の両立を図ることができます。

なお、具体的な案件への対応については、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、個別労働関係紛争解決促進法などの関連法令を踏まえつつ、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

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