社労士と労働問題に詳しい弁護士との違いは?
最終更新日:2023.7.12(公開日:2023.7.12) / 監修者:営業責任者 渥美
社労士と労働問題に詳しい弁護士との違いは?

最終更新日2024.11.20(公開日:2023.7.12)
監修者:営業責任者 渥美

社労士と労働問題に詳しい弁護士との違いは?

はじめに

社労士と労働問題に詳しい弁護士は、どちらも労働問題に詳しい専門家ですが、専門分野や取り扱う問題が異なるため、それぞれの得意分野が異なります。本稿では、社労士と労働問題に詳しい弁護士の違いを詳しく解説し、企業や個人がどのような場合にどちらの専門家に相談すべきかを明確にしていきます。

社労士とは?

社労士は、「社会保険労務士」の略称で、労働および社会保険に関する法令に基づいて、事業主、労働者、その他の関係者からの相談に応じ、書類作成、申請、審査請求、などの代理業務を行う国家資格を持つ専門家です。

社労士の主な業務は以下の通りです。

  • ・労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成
  • ・人事労務管理に関する相談・指導
  • ・社会保険・労働保険に関する事務代理
  • ・助成金の申請代行
  • ・就業規則の作成・変更
  • ・労働時間管理の適正化支援

社労士は、日本労働組合総連合会から登録されるため、第三者的、公正な立場での労務問題の解決が可能です。また、生産現場の労働問題に密着しているため、業務上の改善やコンサルティングなどを行うことができます。

弁護士とは?

弁護士は、法律事務の取り扱いを職業とする専門家で、国家資格として認められています。弁護士は、依頼者の権利を擁護し、法的紛争の解決を図ることを主な業務としています。

労働問題に詳しい弁護士の主な業務は以下の通りです。

  • ・労働関連の法律相談
  • ・労働契約や就業規則の法的チェック、作成
  • ・労働紛争の調停・和解交渉
  • ・労働審判や訴訟の代理人
  • ・労働組合との団体交渉の支援
  • ・ハラスメント問題への対応
  • ・M&Aや組織再編時の労働問題対応

労働法に詳しい弁護士は、企業や個人の労働問題に対する法的なアドバイスを提供したり、取り扱いにくい問題に取り組んだりすることができます。また、労働裁判において、依頼者の代理人として訴訟を行うこともできます。

社労士と労働問題に詳しい弁護士の違い

社労士と労働問題に詳しい弁護士は、どちらも労働問題に詳しい専門家ですが、それぞれの得意分野が異なります。

社労士の特徴

  • ・社会保険や労働保険など,社会保障制度全般について深い知識を持つ
  • ・企業の現場で生じる日常的な労務問題に対応可能
  • ・就業規則の策定や運用,労働契約書の作成などの実務に強い
  • ・従業員の評価制度の設計,残業や休暇取得などの勤務管理に詳しい
  • ・助成金の取得や社会保険の手続きなど,行政手続きに精通している

労働問題に詳しい弁護士の特徴

  • ・労働法全般に関する深い法的知識を持つ
  • ・労働紛争の解決や訴訟対応に強い
  • ・複雑な労働問題や法的リスクの高い問題に対応可能
  • ・最新の判例や法改正に基づいた法的アドバイスが可能
  • ・労働審判や訴訟での代理人として活動できる

社労士に相談すべき具体的なケース

社労士は以下のようなケースで特に力を発揮します。

1. 就業規則の作成・変更

就業規則は労働条件の基本となる重要な文書です。社労士は最新の法令に準拠した適切な就業規則の作成や、既存の規則の見直しを行います。特に、働き方改革関連法への対応や、テレワーク導入に伴う規則の変更など、最新の労働環境の変化に対応した就業規則の整備を支援します。

2. 労働時間管理の適正化

残業時間の管理や有給休暇の取得促進など、労働時間に関する課題解決を支援します。具体的には、36協定の締結・届出、変形労働時間制の導入、勤怠管理システムの選定・導入支援などを行います。また、長時間労働の是正や働き方改革の推進に向けたアドバイスも提供します。

3. 社会保険・労働保険の手続き

従業員の入社・退職に伴う各種保険の手続きや、保険料の計算など、煩雑な事務作業をサポートします。特に、短時間労働者への社会保険適用拡大や、雇用保険の適用範囲の変更など、法改正、制度改正に伴う対応を的確に行います。また、年度更新や算定基礎届の作成・提出など、定期的な手続きも代行します。

4. 助成金の申請

各種助成金制度を熟知しており、企業に最適な助成金の選定から申請手続きまでをサポートします。例えば、雇用関連の助成金(特定求職者雇用開発助成金など)や、人材育成関連の助成金(人材開発支援助成金など)、さらには働き方改革関連の助成金(働き方改革推進支援助成金など)の活用を支援します。

5. 労務管理のコンサルティング

人事評価制度の構築や、労働環境の改善など、企業の労務管理全般に関するアドバイスを提供します。具体的には、人事制度の設計、給与体系の見直し、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止研修の実施など、幅広い分野でのコンサルティングを行います。

労働問題に詳しい弁護士に相談すべき具体的なケース

労働問題に詳しい弁護士は以下のようなケースで特に有効です。

1. 解雇・退職勧奨

不当解雇の防止や適切な退職勧奨の進め方など、雇用終了に関する法的アドバイスを提供します。整理解雇の4要件の充足性や、退職勧奨の適法性、解雇予告手当の計算など、法的リスクを最小限に抑えつつ、円滑な雇用終了を支援します。

2. ハラスメント問題

セクハラやパワハラなどのハラスメント事案に対する調査や対応策の提案、訴訟対応を行います。2020年6月に施行されたパワハラ防止法に基づく体制整備や、ハラスメント事案発生時の適切な対応方法、被害者保護と加害者処分のバランスなどについてアドバイスします。

3. 労働争議・団体交渉

労働組合との交渉や労働争議の解決に向けた法的支援を行います。団体交渉の進め方、労働協約の締結、ストライキへの対応など、労使関係に関する複雑な問題について、法的観点からサポートします。

4. 労働審判・訴訟

労働トラブルが裁判所での解決を要する場合、依頼者の代理人として対応します。労働審判制度の活用や、民事訴訟での戦略立案、証拠収集、主張・立証など、法的手続きの全般にわたってサポートします。

5. 非競争義務契約

退職後の競業避止義務に関する契約の作成や、違反時の対応について助言します。有効な競業避止義務契約の要件や、違反時の損害賠償請求の可能性、営業秘密保護との関連など、複雑な法的問題について専門的なアドバイスを提供します。

両者の連携による相乗効果

社労士と労働問題に詳しい弁護士が連携することで、以下のような相乗効果が期待できます。

1. 総合的な問題解決

日常的な労務管理から法的紛争まで、幅広い労働問題に対応できます。社労士が日常の労務管理や行政手続きを担当し、法的リスクが高い問題や紛争が生じた際に弁護士が対応するという役割分担が可能になります。

2. リスク管理の強化

法的リスクと実務的リスクの両面から、企業の労務リスクを最小化できます。社労士が日常的な労務管理のチェックを行い、潜在的なリスクを早期に発見し、必要に応じて弁護士が法的観点からリスク評価を行うことで、総合的なリスク管理が可能になります。

3. コスト削減

社労士による日常的な労務管理の適正化と、弁護士による法的リスクの事前チェックにより、労働紛争の発生を未然に防ぐことができます。適切な予防策を講じることで、将来的な訴訟リスクを削減できると言えます。労務管理が不十分な状態で訴訟が起きると企業側に多大な損失が発生することがあります。そういったコストの発生を防ぐことに繋がります。

4. 迅速な対応

それぞれの専門性を活かし、問題の性質に応じて最適な専門家が即座に対応できます。例えば、労働基準監督署の臨検時には社労士が対応し、従業員との法的トラブルが発生した際には弁護士が即座に対応するなど、状況に応じた柔軟な対応が可能になります。

費用面での違い

社労士と弁護士では、一般的に以下のような費用面での違いがあります。

1. 報酬体系

社労士多くの場合、月額顧問料や作業ごとの固定報酬制を採用しています。例えば、月額2万円〜30万円程度の顧問料や、就業規則作成で20万円〜50万円程度の固定報酬などが一般的です。

弁護士時間単位の報酬(タイムチャージ)や成功報酬制を採用することが多いです。労働問題の場合、1時間あたり2万円〜5万円程度のタイムチャージや、解決金額の10%〜30%程度の成功報酬などが一般的です。

2. 費用の予測可能性

社労士定期的な業務が多いため,比較的費用の予測がしやすいです。月額顧問契約を結ぶことで,年間の労務管理コストを事前に把握することができます。

弁護士案件の複雑さや長期化によって費用が変動する可能性があります。特に訴訟になった場合は,進行状況によって費用が大きく変わる可能性があります。

3. 初期相談料

社労士無料または低額(5,000円〜10,000円程度)の初回相談を設けていることが多いです。

弁護士有料の初回相談が一般的ですが、労働問題に特化した無料相談を設けている場合もあります。一般的な初回相談料は30分5,000円〜10,000円程度です。

選び方のポイント

社労士や労働問題に詳しい弁護士を選ぶ際は、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 1. 専門性:労働問題や特定の業界に特化した経験を持つ専門家を選ぶ
  • 2. 実績:過去の相談対応や問題解決の実績を確認する
  • 3. コミュニケーション能力:相談者の話をよく聞き、分かりやすく説明できる専門家を選ぶ
  • 4. アクセシビリティ:相談しやすい場所にオフィスがあるか、オンライン相談が可能かを確認する
  • 5. 費用:料金体系や見積もりを事前に確認し、予算に合うかを検討する
  • 6. 信頼性:所属する団体や受賞歴、口コミなどを参考に信頼性を判断する

企業や個人は、自身の状況や課題に応じて、これらのポイントを考慮しながら適切な専門家を選択することが重要です。
また、社労士事務所や弁護士事務所、事務所によってサポートする得意業種や、得意手続きなどの得意分野が違いますので、そういった面でも、自社のニーズに合わせた事務所探しがとても重要になります。

まとめ

企業や個人が最も適切なアドバイスを受けるためには、社労士と労働問題に詳しい弁護士を状況に応じて使い分けたり、場合によっては両者を併用したりすることが効果的です。

重要なのは、企業や個人が自身の状況や課題を正確に把握し、それに最も適した専門家を選択することです。また、問題が複雑化する前に早めに専門家に相談することで、リスクを最小限に抑え、効率的な問題解決が可能になります。

最後に、労働問題は企業の存続や個人の生活に直結する重要な問題です。したがって、専門家との信頼関係を構築し、長期的な視点で労務管理や労働問題の解決に取り組むことが望ましいでしょう。

今後も、働き方改革の進展や新しい雇用形態の登場など、労働を取り巻く環境は変化し続けると予想されます。そのような変化に適切に対応していくためにも、社労士や労働問題に詳しい弁護士などの専門家の知見を積極的に活用していくことが、ますます重要になってくるでしょう。

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