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労災休業補償について解説

最終更新日2024.4.24(公開日:2024.4.24)
監修者:営業責任者 渥美

脚立から落下したデッサン人形

労災休業補償について本記事では解説します。
労災保険は労働者を雇用すると企業には加入義務があり、労働災害による傷病や障害を補償するものです。
労働者が労災にあった際の労災休業補償の基礎知識から対象者、計算方法、申請手続き、注意点、労災隠しなどを解説します。
また、絶対に行ってはならない労災隠しについても実例、罰則なども挙げながら合わせて解説していきます。
本記事で説明する内容は以下の通りです。

労災休業補償の基礎知識

労災休業補償は、労働者が業務上負傷または疾病(以下「労災」という)により休業した場合に支払われる補償制度です。収入の補填や治療費などの労災費用を労働者に支給し、労働者の経済的負担を軽減することを目的としています。
休業補償の対象となる労働災害は、業務上の事故や病気、通勤途中の事故によるもので、その結果働けなくなった労働者が対象となります。

ただし、自己責任による事故や病気、業務と無関係の私事による事故は対象外です。
労災休業補償の受給には申請手続きが必要です。具体的な手続きは、労働者が事業主に届け出ることを始め、医師の診断書や事故の詳細などが必要になります。

労災休業補償の対象

労災休業補償の対象は、次の要件をすべて満たす労働者です。

  • ・業務上負傷または疾病にかかったこと
  • ・労災により休業したこと
  • ・労災保険に加入していること
  • ・休業期間が4日以上であること
  • ・労災保険法の適用を受ける事業所に勤務していること

対象となる労働者は、事業主との雇用契約がある者で、業務上の傷病や事故により医師によって休業が必要と判断され、療養や休業が必要となる者です。
ただし、一部の労働者(例:家政婦や個人事業主の助手)は対象外です。
また、通勤途中の事故による傷病も対象となりますが、事業主との雇用契約がない者や自己責任による事故は対象外となります。

労災休業補償の支給額

労災休業補償の支給額は、どのように算出されるか厚労省のホームページから引用します。
休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)が支給されます。なお、所定労働時間の一部について労働した場合には、その日の給付基礎日額から実働に対して支払われる賃金の額を控除した額の80%(60%+20%)に当たる額が支給されます。

休業日数について

休業日数とは、労災により労働者が業務に就けなくなった期間のことです。
休業日数は、労災発生日から医師の診断により就労不能とされた日から、医師の診断により就労可能とされた日までのことを言います。

労災休業補償の支給期間

労災休業補償は、休業期間が3年を超える場合を除き、休業期間中支給されます。ただし、以下のような場合は支給期間が制限されます。

  • ・労災による負傷・疾病が治癒した場合
  • ・労働者が就労可能となった場合
  • ・労働者が死亡した場合

労働者の治療が継続し、労働に復帰できない場合、休業補償の支給期間が延長されることがあります。治療期間が長引く場合には、その他の制度(障害年金等)の利用も検討する必要があります。

労災休業補償の申請方法

労災休業補償を申請するには、労働者は以下の手順に従う必要があります。

  • ・労災発生の届出:労災発生後30日以内に事業主に届け出する。
  • ・労災保険給付金請求書の作成:事業主が作成し、労働者に交付する。
  • ・請求書の提出:労働者は請求書を管轄の労働基準監督署に提出する。

1.労災休業補償の申請・必要書類と提出先

労災休業補償の申請に必要な書類は、労働者が補償を受けるために重要です。
主な書類としては、事故報告書、受診日数の証明、治療費の領収書、医師の証明書があります。
医師の証明書は必要不可欠であり、この証明書には、労働者の傷病・障害の原因や程度、治療内容、期間などが記載されます。
また、治療費用の請求には、医療機関からの領収書や治療費明細が必要です。これらの書類は、労働基準監督署に提出し、審査されたのちに補償が決定されます。

2.労災休業補償の申請・注意点

労災休業補償は、労働者が労災に遭った場合にのみ支給されます。業務外の負傷・疾病や、労働者の故意または重大な過失による労災は対象外です。 厚生労働省の「労災保険給付の概要」から引用しますと、以下のような例があります。

  • ①労働者が就業中に私用(私的行為)を行い、または業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害を被った場合
  • ②労働者が故意に災害を発生させた場合
  • ③労働者が個人的な恨みなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
  • ④地震、台風など天災地変によって被災した場合(ただし、事業場の立地条件や作業条件・作業環境などにより、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情があるときは、業務災害と認められます)

これら以外にも申請期間や提出書類が正確であることが挙げられます。また、治療期間や通院に関する記載も正確に行うことが求められます。認定される補償額は、労働者の平均賃金に基づいて計算されるため、賃金に関する情報も適切に提出することが重要です。

労災隠しについて

労災隠しとは、企業が労働者の労災事故を報告せず、手続きや補償を行わない行為です。企業が労災隠しを行う理由としては、労災が発生すると、企業の評判が傷つく可能性があり、労働者の管理体制について責任を問われます。
労災の発生原因や企業の安全管理体制を明らかにすることを目的として、労働基準監督署からの調査も入り、厳しく調査されます。
以下、労働基準監督署による調査の内容を挙げます。

  • ・現場調査: 労災が発生した現場を調査し、事故状況や作業環境を確認。
  • ・関係者への聞き取り: 労災に関与した従業員、管理者、目撃者から事情を聴取。
  • ・書類調査: 労災届、安全管理規定、作業日誌などの関連書類を調査。
  • ・安全管理体制の確認: 企業の安全管理体制が適切かどうかを確認。これには、安全教育、リスクアセスメント、安全パトロールなどが含まれる。
  • ・労災認定の検討: 労災が業務上かどうかを検討。

管理体制の不備が見つかると「是正勧告」を受けますし、最悪の場合は営業停止になる可能性もあります。
そのため労災隠しという、重大な違反を企業が行うことがあります。
労働者側としての労災隠しについての相談窓口は、各地域労働局や労働基準監督署があります。また、労働法に詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。

労災隠しの実例

ケースとして多くある労災隠しの実例を挙げます、厚生労働省のホームページから以下引用します。

『労働災害が発覚するまで「労働者死傷病報告」を提出しなかったとして○○労働基準監督署は労働安全衛生法違反の疑いで、2次下請である塗装業Bの代表○○と3次下請の塗装業Cの代表○○を○○地方検察庁に書類送検した。
マンション新築現場で、Cの作業員が吹き付け塗装をするためのシート張りをする際、転倒し右手首を複雑骨折したが、BとCは共謀して、「受注を確保するために元請けに労災保険で迷惑をかけたくない。」として労働災害を隠蔽したもの。』

こういった、受注を確保するための労災隠しや、逆に労働者が業務上ケガをしてしまったが会社に咎められそうで言いづらく、労働者側が労災を報告せず発覚しない、という場合もあります。

企業が労災隠しを行った際の罰則

労災隠ぺいは、労働者の健康や安全を脅かし、企業の社会的責任を損なう重大な違反行為です。罰則の適用は、労災隠ぺいの程度や結果によって異なります。
以下に例を挙げます。

労働安全衛生法による罰則

  • ・過失による労災隠ぺい(第120条):6月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • ・故意による労災隠ぺい(第121条):1年以下の懲役または100万円以下の罰金

労働基準法による罰則

  • ・労災隠ぺい(第119条):30万円以下の罰金
  • ・業務上過失致死傷罪(刑法第210条):労働者の労災が死亡または重傷につながった場合、企業の責任者が業務上過失致死傷罪で起訴される可能性があります。
  • ・過失による業務上過失致死傷(第210条第1項):7年以下の懲役または禁錮
  • ・故意による業務上過失致死傷(第210条第2項):10年以下の懲役

労働安全衛生法違反による行政処分

  • – 業務停止命令
  • – 営業禁止命令

まとめ

労災休業補償は、労働者が業務上負傷または疾病により休業した場合に支払われる補償制度です。
対象となる労働者は、事業主との雇用契約がある者で、業務上の傷病や事故により医師によって休業が必要と判断され、療養や休業が必要となる者です。

新生に関しては事故報告書、受診日数の証明、治療費の領収書、医師の証明書などが必要であり、労災休業補償の対象となるかも確認が必要です。 企業側としては決して労災隠しを行ってはなりません。重大な違反になるため重い罰が科せられてしまいます。

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