最終更新日2024.3.11(公開日:2023.5.16)
監修者:営業責任者 渥美
はじめに
労働保険は、労働者の雇用に関するリスクに備えるための制度です。
具体的には、労働者が失業した場合に支給される「失業保険」や、労働者が職場でケガや病気をした場合に支給される「労働災害補償保険」などがあります。
失業保険は、就職活動中の生活費を支援し、就職先が見つかるまでの間の生活を支える制度です。
失業した原因が自己都合であっても、受給条件を満たす場合には一定期間、給付を受けることができます。
一方、労働災害補償保険は、労働者が就業中にケガや病気をした場合に、その治療費や給与の一部を補償する制度です。
労働者が労働災害に遭った場合には、労災認定を受けることで給付を受けることができます。
また、労働者が疾病によって仕事に復帰できない場合には、傷病手当金が支給される制度もあります。
これらの負担は、雇用主と労働者が折半して負担する形になっています。
雇用主は、従業員を雇用することによって、社会に対して一定の責任を負っていると考えられており、この負担を通じて、その責任を果たすことになります。
この制度は、労働者が労働によって発生する様々なリスクに対して、保障を受けることができる制度です。
日本では労働保険法に基づいて、健康、厚生年金、雇用、労災の4種類の保険が運営されています。
広義ではこの4種類は社会保険ですが、狭義では「雇用保険、労災保険」の2つを労働保険と呼んでいます。この労働保険「雇用保険」と「労災保険」の2つについて解説していきます。
雇用保険は、失業や雇用不安定による収入の減少を補償する社会保険制度です。
失業給付、雇用継続給付、育児休業給付などの給付金が支給されます。
雇用保険の加入要件を簡易的に以下にまとめます。
事業主から雇用されている期間が1年以上であること(ただし、1年未満でも一定の要件を満たせば加入可能)。
月給が88,000円以上であること(2023年4月時点)。
週の労働時間が20時間以上であること。
以下のいずれかに該当しないことです。
雇用保険における給付金の種類は以下のようなものがあります。
給付金の受給条件
雇用保険の保険料は労働者と事業主が折半で負担します。
保険料率は、失業率や給与水準によって変動します。
労災保険は、業務上の負傷、疾病、障害、死亡に対して補償を行う社会保険制度です。
療養費、休業補償、障害補償、遺族補償などの給付金が支給されます。
労災保険の給付金の受給条件は、業務上の負傷や疾病であること、労災認定を受けることです。
通勤や退勤の勤務経路でのケガなども含まれます。
例えば、買い物などで勤務経路を逸れた所でのケガは、労災認定を受けられない場合があります。
労災保険の保険料は事業主が全額負担します。
労災保険料は、事業主が労働者1人あたり毎月納付する必要があります。算出方法は以下の通りです。
事業の種類によって、保険率が異なります。
労災保険料率は、労働災害の発生率や危険度を考慮して厚生労働省が定めています。
労災保険料は、以下の式で計算します。
労災保険料 = 労災保険料率 × 従業員の賃金総額
例
事業の種類 | 食品製造業 |
---|---|
労災保険料率 | 6/1000 |
従業員の賃金総額 | 1000万円 |
この場合、労災保険料は、0.006 × 1000万円 = 6万円 となります。
労災保険料は、毎月20日までに納付する必要があります。納付方法は、以下の通りです。
次に業種によっての保険料率の違いですが、労災保険率は各業種によって労災保険料率が設定されています。
建設業を例にあげると以下のとおりです。
舗装工事業 | 9/1000 |
---|---|
既設建築物設備工事業 | 12/1000 |
その他の建設事業 | 15/1000 |
※2023年4月1日最新
労働者が労働災害に遭った場合、これに加入している企業であれば、一定の補償を受けることができます。
このような労働災害に備え、法律で加入が義務付けられています。
加入には、法律による加入義務があります。
労働者は、就業先で労災に加入されているかどうかを確認することができます。
正社員であれば、雇用契約書等で確認し、派遣労働者やアルバイト等の場合は、労働者派遣法や労働者派遣事業の有無等で確認することが可能です。
この制度は法律によって義務付けられており、従業員が1人以上いる全ての企業が加入することが義務付けられています。
労働災害が起きたときには、これに加入していない企業であっても、加入しなければなりません。
また、加入期間が切れたばかりの場合でも、加入しなければなりません。
労働者が加入していない場合、労働者、その家族等が事故や疾病によって被った損害については、加入している場合と比べ支援を受けることができません。
一定のリスクに対して、最小限の保障を受けるためには、労働者本人や自営業者等は加入することが求められます。
雇用保険と労災保険の違いを以下で比較します。
特徴 | 雇用保険 | 労災保険 |
---|---|---|
目的 | 失業や雇用不安定の補償 | 業務上の負傷や疾病の補償 |
対象者 | 労働者 | 労働者(通勤途上も対象) |
給付金の種類 | 失業給付金、雇用継続給付金など | 療養費給付金、休業補償給付金など |
受給条件 | 失業や雇用不安定など | 業務上の負傷や疾病 |
保険料負担 | 労働者と事業主が折半 | 事業主が全額負担 |
保険料率 | 失業率や給与水準によって変動 | 業種や事業規模によって変動 |
雇用保険と労災保険は、労働者の生活と経済的安定を確保するために不可欠な制度です。
雇用保険:失業や雇用不安定時に収入を補償することで、労働者の生活を安定させます。
また、再就職支援や教育訓練の支援も行うことで、雇用の維持と向上を促進します。
労災保険:業務上の負傷や疾病による経済的損失を補償することで、労働者の健康と安全を守ります。
また、障害が残った場合や死亡した場合には、遺族の生活を支援します。
これらの制度は、労働者と事業主の双方にとって安心感と安定性を提供し、健全な労働環境の維持に貢献しています。
さらに、法律によって、事業主が加入していない場合、重い罰則が設けられます。
このような企業は、1年未満の未加入であれば、最高で100万円以下の罰金を受けることがあります。
また、2年以上未加入の場合は、1年未満の場合よりも重い罰則が科され、最高で240万円以下の罰金を受けることがあります。
さらに、過去に労災発生件数が多い企業や、従業員数が多い企業は、30年間の加入期間が義務づけられています。
このため、加入することは企業が法律を順守するために重要であり、労働災害等の発生時に従業員を保護することが必要であると考えられます。
以上のように、加入することは、法律に基づいた義務であり、従業員を守るために必要なことです。
企業は、労働災害を防止するために安全対策、法律の遵守、従業員の教育・訓練などを行い、労働者たちの安全と健康を確保することが求められます。
労働者にとって、職業の安全と健康は最も重要な問題の一つです。
そのため、失業や雇用を守るための育休、労働災害に備えて労働保険に加入し、給付や支援を受けることは、自身や家族のリスクを最小限に抑えるために必要なことです。
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