ikujikaigokyuugyouhou-kaisei 【2025年4月施行】育児介護休業法改正で人事実務はこう変わる!企業対応の完全ガイド
【2025年4月施行】育児介護休業法改正で人事実務はこう変わる!企業対応の完全ガイド

最終更新日2025.3.11(公開日:2025.3.11)
監修者:営業責任者 渥美

要介護の夫人

はじめに

2024年5月24日、育児介護休業法の改正法が国会で可決・成立しました。2025年4月からの段階的施行に向けて、企業の人事実務は大きな転換点を迎えます。本稿では、改正の要点と実務対応のポイントを解説します。

今回の改正が経営課題となるのか

今回の改正の最大の特徴は、これまでの「配慮義務」や「努力義務」の多くが「法的義務」へと変わることです。特に、柔軟な働き方に関する具体的措置の義務化は、企業の人事管理に大きな影響を与えます。

また、育児休業取得状況の公表義務が従業員300人超の企業にまで拡大されることで、企業の両立支援への取り組みが社会的に可視化されます。これは人材確保や企業評価に直結する要素となり、経営戦略上の重要課題として位置づける必要があります。

企業規模・期限別の必須対応事項

1. すべての企業が対応必須の改正事項(2025年4月~)

看護休暇制度の拡充により、学校行事への参加なども取得事由に加わり、対象となる子どもの年齢も小学校3年生まで引き上げられます。この変更に対応するためには、急な休暇取得にも対応できる業務体制の構築が不可欠です。部署内での業務の可視化と共有化を進め、柔軟な人員配置が可能な体制を整備する必要があります。

残業免除制度は3歳以上の就学前の子を持つ従業員まで対象が拡大されます。特に、残業が恒常的に発生している部署では、業務プロセスの見直しや増員計画の策定など、計画的な準備が求められます。

介護休暇については、勤続6ヶ月未満の従業員への適用除外規定が撤廃され、新入社員も含めて一律に取得が可能となります。これに伴い、入社時の説明内容や休暇管理システムの改修が必要です。

2. 企業規模別の追加対応事項

従業員300人超の企業では、育児休業取得状況の公表が義務付けられます。公表内容は男女別の育休取得率または取得期間の平均値ですが、より詳細な情報を自主的に開示することで、企業の両立支援への積極姿勢をアピールできます。

従業員100人超の企業では、行動計画策定時の定量的把握と数値目標設定が義務化されます。単なる数値目標の設定にとどまらず、管理職研修の充実や円滑な職場復帰支援など、具体的な施策を計画に盛り込むことが重要です。

3. 2025年10月対応の新制度

2025年10月からは、3歳以上の就学前の子を持つ従業員向けに、柔軟な働き方を実現するための措置を2つ以上導入することが必須となります。始業時刻の変更、テレワーク(月10日以上)、短時間勤務、特別休暇(年10日以上)などから選択して導入します。

これらの措置の導入には、必要な機器の整備やセキュリティ対策、業務プロセスの見直しなど、包括的な準備が必要です。また、従業員の意向確認も義務化されるため、個別面談などを通じて具体的なニーズを把握し、実効性の高い制度設計につなげることが重要です。

円滑な制度移行のための実務手順

1. 現状把握と制度設計(2024年内)

まず、現行の就業規則や育児介護関連規程を精査し、改正法との差異を明確にします。独自の上乗せ制度がある場合は、その継続の是非も含めて検討が必要です。

また、部署や職種による働き方の違いを踏まえた実態調査を実施し、現場の具体的なニーズや課題を把握します。これらの情報を基に、自社の実情に合わせた制度設計を行います。

2. 具体的な準備作業(2025年第1~2四半期)

就業規則の改定では、改正内容の正確な反映と既存規定との整合性確保が重要です。特に、曖昧な表現は運用面でのトラブルの原因となるため、明確な規定の作成を心がけます。

システム面では、人事、勤怠、給与など関連システムの改修範囲を早期に確定し、十分なテスト期間を確保します。特に、新しい休暇制度への対応や柔軟な働き方の管理機能については入念な検証が必要です。

3. 運用準備と展開(2025年第3四半期以降)

新制度の導入は、まず一部部署でのトライアルを実施し、運用面での課題を早期に発見・対応することが効果的です。その後、部署の特性を考慮した順序で全社展開を進めます。

定期的なモニタリングを通じて、制度の利用状況や職場への影響を確認し、必要に応じて運用方法の改善を図ります。利用者や管理職からのフィードバックは、制度の実効性向上に向けた貴重な情報源となります。

実務運用のポイントと課題対応

1. 人員配置と業務管理

新制度の効果的な運用には、柔軟な人員配置と業務分担の仕組みが不可欠です。各職務の所要時間、必要スキル、優先度を明確化し、部署内で複数業務を担当できる人材の育成を計画的に進めます。

また、部署を超えた応援体制を構築するため、業務マニュアルの整備や情報共有の仕組みを確立します。定期的な部署間の人材交流は、緊急時の相互支援をスムーズにする効果があります。

2. 新しい育児介護休業制度運用の具体策

新しい育児介護休業制度の運用には、明確な基準とガイドラインが必要です。特に、看護休暇の拡大された取得事由については、具体的な事例を含めた判断基準を整備します。ただし、過度に厳格な基準は制度利用を抑制する可能性があるため、バランスを保つことが重要です。

制度利用に関する相談窓口を設置し、利用者からの質問や相談、さらにはハラスメント対応まで、包括的なサポート体制を整えます。窓口担当者には十分な知識が求められるため、計画的な育成が必要です。

3. 管理職支援と組織体制

管理職向けには、制度の理解促進と実務対応力の向上を目的とした研修プログラムを実施するのも効果的でしょう。制度概要の説明に加え、部下との面談手法や業務調整のポイントなど、理解を深めていくのが望ましいです。

また、日常的な実務対応をサポートするため、具体的な手順や判断基準を示したマニュアルを整備しましょう。特に、制度利用者との面談や業務調整については、具体例を交えた詳細な手引きが有効です。

制度活用による組織発展

新制度の導入を、法対応にとどめず、組織の価値向上につなげることが重要です。両立支援の充実は、人材確保・定着の強化やESG評価の向上に寄与し、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。

また、テクノロジーの進化や多様化する働き方を見据え、制度の継続的な見直しと拡充を図ることで、より効果的な人材活用とキャリア開発支援が可能となります。両立支援と人材育成を連携させた戦略的な取り組みが、今後の企業競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

弊所サービスに関するご質問やお見積もりのご依頼は
下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

トップへ戻る