douitsuroudou-douitsuchingin 同一労働同一賃金の概要とその影響:公平な処遇の実現に向けて
同一労働同一賃金の概要とその影響:公平な処遇の実現に向けて

最終更新日2024.7.8(公開日:2024.7.8)
監修者:営業責任者 渥美

従業員ののイメージ

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同じ会社で働く正社員と非正規社員(パートタイマー、有期雇用労働者、派遣労働者など)の間で、職務内容や人材活用の仕組みなどが同じ場合、賃金などの待遇についても同等にすべきという考え方です。この原則は、労働者の公平な処遇を確保し、福利厚生などの格差の解消を目指し、働き方に関わらず、意欲と能力に応じた公正な待遇を受けられるようにすることを目的としています。

同一労働同一賃金の必要性

近年、非正規雇用労働者の増加に伴い、正社員と非正規社員の間の待遇格差が社会問題化しています。この格差は、非正規社員の働きがいや生活の質に影響を及ぼし、企業の生産性や競争力の低下にもつながります。

こうした状況を受け、政府は「同一労働同一賃金」の実現を目指し、関連法案を整備してきました。昨今は労働者不足が顕著であり、労働者はより良い労働環境を目指して転職が当たり前の時世となっています。

継続的な雇用の維持のためにも同一労働同一賃金は公平性のためにも必要となっていると言えます。

同一労働同一賃金についての法改正

同一労働同一賃金についての法改正は、2020年4月1日に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」および「労働者派遣法」の改正にあります。

これらの法改正により、不合理な待遇差の解消が義務付けられ、同一企業内における正社員と非正規社員の待遇格差是正に向けた動きが加速しています。

同一労働同一賃金が企業に与える影響

企業にとって、同一労働同一賃金への対応は急務の課題です。待遇差の点検・見直しや、賃金制度の再設計など、労務管理体制の整備が求められます。また、非正規社員の処遇改善に伴うコスト増加への対策も必要となります。

一方で、公平な処遇の実現は、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保・定着につながり、長期的な企業価値の向上に寄与すると期待されます。が、そうは問屋が卸さず、おいそれとは対応できません。

資金が潤沢にある企業では前向きに進めていくことも可能でしょうが、そのような企業ばかりではありませんので、人件費のコストアップは容易ではありません。

同一労働同一賃金への対応策

同一労働同一賃金への対応に際しては、まず現状の待遇差を把握し、不合理な差異がないか点検することが重要です。その上で、職務内容や責任の程度、スキルなどに基づく公正な評価制度を設計し、賃金体系の見直しを図る必要があります。

評価制度の設計にあたっては、労使間の十分な対話を通じて、納得感のある制度とすることが求められます。

また、非正規社員の処遇改善に伴うコスト増加に対しては、言うは易し行うは難しではありますが、業務の効率化や生産性の向上によって吸収することが望ましいといえます。同時に、非正規社員の能力開発やキャリア形成の支援にも取り組み、企業の人材力強化につなげることが重要です。

社会保険労務士に相談するメリット

同一労働同一賃金への対応は、労務管理や賃金制度の専門的知識を必要とする複雑な課題です。社会保険労務士は、労働法規や雇用管理に精通した専門家であり、企業の実情に合わせた的確な助言を提供してくれます。企業側の要望としては、同一労働同一賃金の違反になるのを避けたいはずです。

待遇差の点検や評価制度の設計、賃金規定をはじめ、就業規則の改定など、同一労働同一賃金に関する一連の対応を支援してもらえるため、スムーズな対応の大きな助力となります。

同一労働同一賃金の違反例

同一労働同一賃金への対応において、非正規社員の処遇改善は重要な取り組みの一つです。ここでは、同一労働同一賃金の違反例を挙げます。

日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件

この事件の裁判は、郵便業務に従事する「正社員」と「契約社員」で、各種手当や休暇等の付与に違いがあることが不合理かどうか争われました。 扶養手当、祝日給、年末年始勤務手当、夏季冬期休暇、有給の病気休暇。これらの項目について全て不合理であると判決されました。

判決理由についてふれていくと、「扶養手当」「有給の病気休暇」においては、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば妥当、短期間の勤務でなく繁閑に関わらない勤務が見込まれている契約社員にも「祝日給」「夏季冬季休暇」は妥当、「年末年始勤務手当」については実際に勤務したこと自体が支給要件なので妥当、ということになりました

上記の事件以外にも簡易的な違反例を挙げるなら、パート・アルバイトは社員食堂を使用できない、であるとか、契約社員には慶弔休暇が付与されないなども違反になります。

同一労働同一賃金と企業の社会的責任

同一労働同一賃金への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)の観点からも重要な意義を持ちます。CSRとは、企業が社会の一員として、経済的責任だけでなく、社会的・環境的責任を果たすことを指します。労働者の公平な処遇を実現し、働きがいのある職場環境を整備することは、企業のCSRの重要な要素の一つといえます。

同一労働同一賃金に積極的に取り組む企業は、社会からの信頼や評価を獲得することができます。非正規社員の処遇改善は、企業イメージの向上にもつながり、優秀な人材の獲得や定着にも好影響を与えます。また、投資家や消費者の間でも、CSRに積極的な企業を支持する動きが広がっており、同一労働同一賃金への取り組みは、企業の競争力強化にも繋がるものといえます。

同一労働同一賃金の実現は、企業と労働者双方にとってメリットのある取り組みです。企業は、社会的責任を果たしながら、持続的な成長を実現することができます。労働者は、公正な処遇を受けながら、やりがいを持って働くことができます。同一労働同一賃金の推進は、企業と労働者が共に歩む、より良い社会の実現につながるものと期待されます。

結論

同一労働同一賃金は、非正規雇用労働者の増加に伴う労働環境の変化に対応するための重要な原則です。法整備の進展により、企業には同一労働同一賃金の実現に向けた積極的な取り組みが求められています。待遇差の点検・是正、公正な評価制度の導入、非正規社員の能力開発支援など、多面的な対応が必要とされます。違反にならない合理的な正当性が必要です。

同一労働同一賃金への取り組みは、企業にとってはコスト増加などの課題もありますが、中長期的には従業員のモチベーション向上や生産性の改善につながり、企業の持続的成長に寄与するものと期待されます。また、非正規社員の処遇改善は、企業の社会的責任の観点からも重要な意義を持ちます。

まとめ

同一労働同一賃金は、労働者の公平な処遇の実現を目指す重要な原則です。企業にとっては対応すべき課題も多いですが、適切に取り組むことで、従業員の満足度向上や企業の人材力強化につながります。社会保険労務士などの専門家の助言を受けながら、自社の実情に合った対応策を講じていくことが求められます。同一労働同一賃金の実現に向けた取り組みは、企業の持続的成長にも寄与するものと期待されます。

同一労働同一賃金の実現に向けては、企業の積極的な取り組みとともに、社会保険労務士などの専門家の助言を活用することが有効です。各企業の実情に合った対応策を講じながら、非正規社員を含めたすべての労働者が働きがいを持てる職場環境の整備を進めていくことが求められます。同一労働同一賃金の推進は、企業と労働者双方にとって望ましい社会の実現につながるものといえるでしょう。

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