最終更新日2024.8.29(公開日:2024.8.29)
監修者:営業責任者 渥美
令和6年(2024年)10月から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険(社会保険)の適用がさらに拡大されます。対象の会社には年金事務所より今回の法改正で短時間労働者の社会保険への適用拡大対象となった案内書類が届きます。
本記事では、この重要な制度改正について、企業が知っておくべき主要なポイントと具体的な対策を詳しく解説します。
今回の適用拡大は、「特定適用事業所」と呼ばれる以下の条件を満たす企業等が対象となります。
企業規模の判定は、原則として前年度の月末時点の平均被保険者数で行います。新規に設立された法人については、51人を超えた月が何か月あるかで判断します。あとは設立時から6か月で51人という想定外のケースより、普通に継続している事業ですと何月くらいに何か月分の期間をサンプリングしているかが重要です。 2023年10月以降に被保険者が51人を超える月が6か月以上あれば、年金事務所が該当と見做して10月1日を該当日として通知書が届きます。直近11か月の内に5か月だとお知らせを通知して、もし要件を満たして該当すれば事業主が10月2日以降を該当日として特定適用の該当届を出します。
特定適用事業所で働く短時間労働者のうち、以下のすべての条件を満たす方が社会保険の適用対象となります。
今まで配偶者の扶養範囲内で働いていた方は、配偶者の扶養から外れる事となり自ら社会保険に加入し自身で社 会保険料を負担していくこととなります。
また、配偶者の会社で社会保険の扶養に入っている事を条件とする家族手当が支給されている場合も想定され、その支給も停止される等の波及も考えられます。
雇用契約上の労働時間が20時間未満でも残業等で20時間を2か月連続で超過すれば、3か月目からは加入が必要です。 。
基本給や諸手当等の合計額で判断します。残業代や賞与は含みません。短時間労働者の場合、時給制が多いため、時給×所定労働時間で計算します。
雇用契約期間が2ヶ月を超えるか、更新により2ヶ月を超えることが見込まれる場合が対象となります。
原則として学生は適用除外ですが、休学中の学生や夜間学生は適用対象となる可能性があります。個別のケースについては年金事務所に確認することをおすすめします。
まずは自社が特定適用事業所に該当するか、また適用対象となる短時間労働者がいるかを確認しましょう。
その上で、以下のような影響分析を行うことが重要です。
対象となる従業員に対して、制度変更の内容や影響について丁寧に説明することが重要です。
特に以下の点に注意が必要です。
必要に応じて就業規則を改定し、短時間労働者の処遇や労働条件を明確にしましょう。
主な改定ポイントは以下の通りです。
社会保険料の控除に対応できるよう、給与計算システムの更新が必要になる場合があります。
以下の点を確認しましょう。
社会保険の適用拡大は人事制度に幅広く波及し、整備や対応、手続きなどを行わなければならないことが多分に増えます。
社労士のサポートをお勧めします。そのメリットとしては以下のようなことが挙げられます。
社会保険給付金の申請方法は?
年金の請求、育児休業給付金、介護休業給付金など、様々な給付の申請は大体オンライン申請が可能です。その際は総務省が運営するe-Govというポータルサイトを使用することになります。オンライン申請が難しい場合は郵送、もしくは窓口で申請することになります。
適用拡大に間に合わない場合、罰則はありますか?
意図的な未加入や虚偽の報告には罰則が適用される可能性があります。まずは誠実に対応し、遅れが生じる場合は年金事務所に相談することをおすすめします。早めに相談することで、柔軟な対応が可能になる場合があります。
短時間労働者の労働時間を20時間未満に抑えることは可能ですか?
法律上は可能ですが、意図的に社会保険の適用を避けるために労働時間を抑制することは望ましくありません。労働基準監督署や年金事務所の調査対象となる可能性があります。むしろ、適用を前提とした魅力的な雇用条件の設計を検討することをおすすめします。
適用拡大後に被保険者数が減少した場合はどうなりますか?
一度特定適用事業所となった後、被保険者数が51人を下回っても、特定適用事業所の要件を継続して満たすものとみなされます。ただし、1年間継続して被保険者数が51人未満となった場合は、年金事務所に申出を行うことで、特定適用事業所でなくなる可能性があります。
短時間労働者への社会保険適用拡大は、企業にとって一時的なコスト増や事務負担の増加をもたらす可能性もあります。
しかし、この制度変更を単なる負担増としてではなく、工数削減による労働時間の削減や人事労務周りの見直しの機会として捉えることが重要です。以下に、対応のポイントをまとめます:
社会保険料負担の増加を吸収するために、業務プロセスの見直しや効率化が必要になるかもしれません。
これは、長年の課題であった業務改善に着手する絶好の機会となります。ITツールの導入や業務の自動化なども検討しましょう。
適用拡大への対応は大きな負担ですが、前向きにとらえると労務管理全般の見直しの機会にもなりえます。
この機会に、労働時間管理や給与計算の仕組みを総点検し、より強固なコンプライアンス体制を構築しましょう。
社会保険の適用拡大は、労務管理、財務、法務など多岐にわたる分野に影響を及ぼす複雑な課題です。
そのため、社会保険労務士や税理士、弁護士などの専門家と連携し、総合的なアドバイスを受けることが極めて重要です。
当事務所では、この制度変更に関する豊富な知識と経験を持つ専門家が、御社の状況に合わせた最適な対応策を提案いたします。
以下のようなサポートを提供しています。
不明点や懸念事項がある場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。御社の円滑な制度移行と、その先にある成長をしっかりとサポートいたします。
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