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ジョブ型雇用の導入

jobgatakoyo3.jpgジョブ型雇用の導入

~ジョブ型雇用導入の際に気を付けるべきポイント~

 先月はジョブ型雇用の概要について説明しましたが、今月はさらに踏み込んで、「人に仕事をつける」とはどういうことなのか? どんなことをしなければならないのか? などジョブ型雇用を導入する際のポイントについて確認していきます。

◆ ジョブ型雇用に必要なもの・・・?

 ジョブ型雇用を導入するにあたって、一番重要なことは【職務記述書】(ジョブ・ディスクリプション/job  description)の存在です。

☆ 職務記述書

 職務記述書とは、その職務の具体的な業務内容やその責任の範囲、またその職務に必要なスキルや経験、難易度が記載されたもののことです。これにより、職務内容が明らかとなり、職務グレードが決まり、給与が決まります。この職務記述書がなければ、それはジョブ型雇用ではなく、ジョブ型「風」雇用であり、また別の雇用制度となります。

 まずは全社の職務を洗い出し、職務記述書を作成することになります。職務記述書には、詳細な記載が必要です。

‹例› 給与計算担当者

〇毎月の給与計算を間違いなく行い、給与支払いを完了させることskill.jpg

  • 通勤経路変更がないか確認をし、通勤手当があれば反映する
  • 給与対象期間内の勤怠データを確認する
  • 欠勤、遅刻早退控除の計算を行う
  • 残業時間を確認し、残業代の計算を行う
  • 新入社員(中途入社を含む)の給与の確認をする
  • 中途入社社員の出勤日に伴い、日割り計算をする
  • 計算データを期日までに上長の確認、承認を得る
  • ネットバンキングにて給与データを取り込み、期日に入金となるよう処理を行う
  • 給与明細書を印刷し、各部署の部長宛てに配付する

〇報告経路(レポートライン)

  • 人事総務部長を上長とし、確認と報告を行うこと。人事総務部内給与データフォルダにて、各月の給与データ及び変更点等についてデータを保管すること(人事総務部係長以上がアクセス権限あり)

〇必要スキル

  • 給与システムが理解でき、操作、入力が可能であること
  • 賃金規程が理解でき、残業代の計算、日割計算、欠勤、遅刻早退控除計算ができること
  • ネットバンキングの操作、入力が可能であること
  • 給与計算経験3年以上が望ましい

〇職務グレード 8等級|役職レベル 人事総務部課長

 ここに、勤怠データの内容チェックが入ることもあれば、通勤手当変更等についてのチェックは別の職務とすることも出来ます。さらに具体的に〇〇日までに等記載できれば、その方がより具体的となります。


◆ ジョブ型雇用と採用・・・?!

 ジョブ型雇用では、新卒一律採用がほとんどないことは先月号でもご紹介した通りです。基本的には、職務ポジションが欠員となった場合、新たな職務ポジションが発生した場合に採用を行います。また、社内公募で職務ポジションを異動(大抵は昇格)することも一般的です。

 では、導入期はどうするのか? ということですが、まずは職務ポジションに人員を配置し、最終的には本人と面談を行い、決定していくことになります。もし、その過程で余剰人員が出来てしまった場合でも、即座に解雇というのは難しいため、その部分については何らかの職務ポジションを用意しておく必要があるかと思います。jobgatasaiyo.jpgのサムネイル画像

 また、新卒一律採用をしないということも、まだ今の日本ではなかなか勇気のいることと思いますので、次の項目でもご説明しますが、新卒採用は人数を絞って継続し、しばらくは適正判断期間とすることなどが考えられます。

◆ 日本型ジョブ型雇用・・・??

 本来のジョブ型雇用は、職務記述書に記載されていることが全てであり、基本的にそこからはみ出した業務は発生しません(発生する場合はまた別の職務となります)。このため、もし同僚が忙しそうにしていても手伝いはできず、するべきではないというのがジョブ型雇用の特徴でもあります。「あなたはあなたの職務を行ってください」というものがジョブ型雇用です。誰かの仕事を手伝うのは、契約違反であり、その同僚の仕事を奪うことにも繋がるとみなされるためです。また、人事評価自体、ほぼありません。すでに職務と職務グレードは決定しており、給与もそれに基づいて決まっているためです。職務を全う出来ていない、スキル不足であると判断されれば、配転や解雇(転職)となります。nihongata.jpg

 今までメンバーシップ型雇用(終身雇用)がほとんどで、同僚が忙しそうにしていれば積極的に手助けをし、職場の雰囲気を円滑とし、そこでまた新しい仕事を覚え、スキルアップし、評価を受け、給与が上がっていく...、そういった雇用とは全く違う制度となります。会社は今までのようなゼネラリストではなく、スペシャリストを求めることになります。本来のジョブ型雇用は日本の風土(学校では仲良く、みんなで手助けして頑張っていきましょう)や今までの企業文化とはあまりに違うため、いきなり本来のジョブ型雇用を導入することは難しい部分もあるかと思います。

 そこで、日本型ジョブ型雇用といったことを模索していくことが、スムーズなジョブ型雇用制度への対応となると考えます。
例えば、

  • 新卒3年目まではジョブローテーションやOJTを通してスキルアップを行い、本人の希望と適切な職務ポジションをマッチングさせる!
  • 一般職は今まで通りで、管理職以上にジョブ型雇用を適用する!
  • 職務をメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用に分けて、それぞれ社内公募でどちらの雇用でも行き来が可能とする!
  • ジョブ型雇用としても、生活サポート的な手当もある程度支給するなど...!nihongata2.jpg

 実際にジョブ型の人事制度導入を発表した日立製作所も、まずはジョブ・ディスクリプションや育成などの仕組みを整え、さらにタレントレビューとよばれる人材の見える化をすすめ、職務とのアサインを行い、約4年ほどかけて運用や関連する福利厚生などの制度や仕組みを整備する予定としています。
 なお、繰り返しとなりますが、現在主流のメンバーシップ型雇用を否定するものではありません。単に制度の違いというだけなのです。今まで見てきたように欧米型のジョブ型雇用をそのままもってきても、日本に馴染むかは別の問題です。少し前には成果主義制度がもてはやされ、成果主義としたものの、やはり運用も難しくなかなか定着しずらかったことも記憶に新しいところです。このため、日本の企業にとって、もっと言えば、導入する御社にとってどうなのか?という見極めが大切となります。ただ、今後、さらに大企業が通年雇用、ジョブ型雇用へシフトしていけば、時代の流れとなっていきますので、どんなものかは理解しておき、対応できる準備は必要になってきます。

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