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精勤手当とは?支給条件や計算方法、申請手続きを徹底解説

最終更新日2025.6.11(公開日:2025.6.11)
監修者:営業責任者 渥美

写真の労をねぎらう様子

「精勤手当」という言葉を聞いたことがありますか?就業規則や給与明細で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。精勤手当は多くの企業で採用されている手当制度ですが、その内容や条件は企業によって異なり、正確な理解が必要です。

この記事では、精勤手当の基本的な意味から支給条件、計算方法、そして税金や社会保険との関係まで、精勤手当に関する疑問を解説します。また、企業側が精勤手当を導入する目的やメリット・デメリットも紹介します。

精勤手当とは

精勤手当とは、欠勤や遅刻、早退せずに勤務した従業員に対して支給される手当のことです。主に従業員の勤務意欲を高め、欠勤率を下げることを目的としています。別名「皆勤手当」とも呼ばれることがあります。

精勤手当は労働基準法で定められた法定手当ではなく、企業が任意で設定する法定外手当の一種です。そのため、支給の有無や金額、条件は企業ごとに異なります。一般的には月単位で支給されることが多いですが、四半期や半年、年間単位で支給される場合もあります。

最近では、働き方改革の推進やワークライフバランスの重視から、精勤手当を廃止したり、別の形の手当に変更したりする企業も増えてきています。しかし、依然として多くの企業で採用されており、給与体系の一部として重要な役割を果たしています。

精勤手当の支給条件

精勤手当の支給条件は企業によって様々ですが、一般的には以下のような条件が設定されています。

基本的な支給条件

無欠勤対象期間中に欠勤がないこと

無遅刻・無早退遅刻や早退がないこと

無休暇取得特定の休暇を取得していないこと(条件は企業による)

これらの条件は、多くの場合「完全精勤」と呼ばれる状態を指します。すべての条件を満たした場合にのみ手当が支給される企業もあれば、条件に応じて金額が変動する段階的な制度を採用している企業もあります。

考慮される休暇の種類

精勤手当の支給条件において、どのような休暇が欠勤としてカウントされるかは企業ごとに異なります。
一般的な例としては:

年次有給休暇多くの企業では有給休暇の取得は精勤手当の対象外としないことが多い

病気休暇通常は欠勤としてカウント

忌引休暇慶弔休暇として認められ、精勤手当に影響しない場合も多い

産前産後休暇・育児休暇法定の休暇であり、精勤手当の対象外とする企業が増えている

介護休暇法定の休暇として精勤手当の対象外とする企業も多い

特に最近では、ワークライフバランスや多様な働き方を推進する観点から、法定の休暇取得を理由に精勤手当を不支給とする制度は見直される傾向にあります。

在宅勤務・テレワークの扱い

新型コロナウイルスの影響などで在宅勤務やテレワークが一般化する中、これらの勤務形態と精勤手当の関係も注目されています。
一般的には:

  • ・企業が認めた在宅勤務・テレワークは通常勤務として扱われる
  • ・勤務時間の管理方法によっては、遅刻・早退の概念が変わる場合がある
  • ・企業ごとに就業規則の改定で対応することが多い

働き方の多様化に伴い、精勤手当の支給条件も変化しています。自社の制度について不明点がある場合は、就業規則や人事部に確認することをおすすめします。

精勤手当の計算方法は?

精勤手当の金額や計算方法は企業によって異なりますが、一般的な計算方法をいくつか紹介します。

定額方式

最も一般的な方法は、条件を満たした場合に一定額を支給する「定額方式」です。

例:

  • ・月間精勤手当: 5,000円/月
  • ・四半期精勤手当: 15,000円/四半期
  • ・年間精勤手当: 50,000円/年

この方式はシンプルで分かりやすく、多くの企業で採用されています。

基本給連動方式

基本給に一定の割合をかけて算出する方法もあります。

例:

  • ・基本給の5%を精勤手当として支給
  • ・基本給×0.03=精勤手当

この方式では、基本給が高い従業員ほど精勤手当も高くなります。

段階方式

条件の達成度に応じて金額が変わる段階方式も存在します。

例:

  • 完全精勤(無欠勤・無遅刻・無早退): 10,000円
  • 遅刻・早退1回以内: 7,000円
  • 遅刻・早退2回以内: 5,000円
  • 欠勤なし(遅刻・早退の回数不問): 3,000円

このように柔軟な制度を設けることで、従業員のモチベーション維持を図る企業もあります。

勤続年数考慮方式

長く勤めている従業員ほど精勤手当が増える仕組みを取り入れている企業もあります。

例:

  • 勤続1年未満: 3,000円/月
  • 勤続1年以上3年未満: 5,000円/月
  • 勤続3年以上: 7,000円/月

このような方式は、長期勤続のインセンティブとしても機能します。

精勤手当の計算方法は就業規則や給与規程に明記されているはずですので、自社の制度について知りたい場合は、これらの規定を確認するか、人事部門に問い合わせるとよいでしょう。

精勤手当と税金・社会保険の関係

精勤手当は給与所得の一部として扱われるため、税金や社会保険料の計算に影響します。ここでは、精勤手当と各種控除の関係について解説します。

所得税・住民税への影響

精勤手当は「給与所得」に含まれるため、所得税と住民税の課税対象となります。
つまり:

  • ・毎月の給与から源泉徴収される所得税の計算に精勤手当も含まれる
  • ・翌年度の住民税額算定の際の所得にも含まれる
  • ・年末調整や確定申告の際も給与所得として計上される

精勤手当を受け取ることで手取り収入は増えますが、同時に税負担も若干増えることになります。

社会保険料(健康保険・厚生年金)への影響

精勤手当は「標準報酬月額」の算定基礎となる報酬に含まれます。
そのため:

  • ・健康保険料の計算に影響する
  • ・厚生年金保険料の計算に影響する
  • ・定期的に支給される場合は、標準報酬月額の定時決定(毎年7月の算定)にも影響する

特に、精勤手当が標準報酬月額の等級変更をもたらす場合は、社会保険料の負担が変わる可能性があります。

賞与扱いとなるケース

精勤手当の支給方法によっては、税法上「賞与」として扱われるケースもあります。
一般的には:

  • ・月給とは別に支給される年間精勤手当や半期精勤手当は賞与扱いとなることがある
  • ・賞与扱いの場合は、社会保険料の計算方法が異なる(標準賞与額に対する保険料)
  • ・所得税の源泉徴収計算も賞与用の計算方法が適用される

このように精勤手当は単なる手当ではなく、様々な税金や保険料に影響する重要な所得項目です。自分の給与体系を理解する際には、これらの点も考慮することが大切です。

企業が精勤手当を導入する理由とは?

企業が精勤手当を導入する背景には、様々な目的や狙いがあります。ここでは企業側の視点から見た精勤手当の導入理由と、その効果について考察します。

出勤率向上と業務効率化

最も一般的な導入理由は、従業員の出勤率を高め、安定した業務運営を図ることです。

  • ・予定外の欠勤が減ることで、業務計画が立てやすくなる
  • ・遅刻・早退の減少により、業務の連続性が保たれる
  • ・特に製造業や小売業など、人員配置が重要な業種では大きな効果がある

従業員のモチベーション向上

金銭的なインセンティブを設けることで、従業員の勤労意欲を高める効果も期待されています。

  • ・目に見える形で勤務態度が評価されることによる満足感
  • ・短期的な目標として意識しやすい
  • ・他の従業員との差別化による優越感

特に基本給に差をつけにくい職種では、このような手当による評価の仕組みが重要になることがあります。

コスト管理の観点

企業経営の観点からは、コスト管理のツールとしての側面もあります。

  • ・欠勤による業務停滞やカバー要員の残業代等のコスト削減
  • ・条件を満たした従業員にのみ支給されるため、人件費の最適化につながる
  • ・業績連動型の賞与と異なり、毎月の支給額が予測しやすい

限られた人件費予算の中で、効果的に分配するための手段として活用されているケースも多いです。

企業文化・風土の形成

精勤を重視する企業文化の形成ツールとしての役割も見逃せません。

  • ・「勤勉さ」を重視する企業価値観の浸透
  • ・チームワークと相互サポートの促進(誰かが休むとチームの負担が増えるという意識)
  • ・「遅刻・欠勤は避けるべきもの」という規範意識の醸成

このように精勤手当は単なる金銭的インセンティブを超えて、企業文化や従業員の行動規範に影響を与える要素となっています。

一方で、近年の働き方改革や多様な働き方の推進の中で、精勤手当の意義を再検討する企業も増えています。特に有給休暇の取得促進や健康経営の観点から、制度の見直しや廃止を進める企業も少なくありません。

精勤手当に関するよくある質問

精勤手当について、労働者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

  • Q

    精勤手当は法律で定められた手当ですか?

    A

    いいえ、精勤手当は法定外手当です。労働基準法で支給が義務付けられている手当(割増賃金など)とは異なり、企業が任意で設定するものです。そのため、支給の有無や金額、条件は企業によって異なります。

  • Q

    有給休暇を取ると精勤手当はもらえなくなりますか?

    A

    企業によって扱いが異なります。有給休暇は労働者の権利として法律で保障されているため、最近では有給休暇の取得を理由に精勤手当を不支給とすることは「有給休暇取得の抑制につながる」として問題視されるケースが増えています。自社の規定を確認することをおすすめします。

  • Q

    病気で休んだ場合、精勤手当はどうなりますか?

    A

    一般的には、病気による欠勤は精勤手当の不支給事由となることが多いです。ただし、企業によっては医師の診断書がある場合は例外とするケースや、年に数日までは病欠を認める制度を設けているケースもあります。

  • Q

    在宅勤務の日は精勤手当の計算にどう影響しますか?

    A

    企業が正式に認めた在宅勤務は通常勤務と同様に扱われるケースが多いため、精勤手当の計算に影響しないことが一般的です。ただし、勤怠管理の方法や就業規則の定めによって異なる場合がありますので、自社の規定を確認してください。

  • Q

    精勤手当が支給されない場合、異議を申し立てることはできますか?

    A

    精勤手当の支給条件が就業規則等で明確に定められており、その条件を満たしているにもかかわらず支給されない場合は、人事部門や上司に確認・相談することができます。条件について解釈の違いがある場合は、労働組合や社内の相談窓口、必要に応じて労働基準監督署などに相談するという選択肢もあります。

  • Q

    精勤手当は退職金の計算に影響しますか?

    A

    退職金の計算方法は企業によって異なりますが、基本給をベースに計算する場合が多く、精勤手当は含まれないケースが一般的です。ただし、就業規則や退職金規程に「算定基礎となる賃金」として精勤手当が明記されている場合は、退職金計算に影響する可能性があります。

精勤手当のトラブル事例と対処法

精勤手当に関連して発生しがちなトラブルと、その対処法について紹介します。実際の事例を参考に、労働者と企業の双方が注意すべきポイントを解説します。

ケース1: 有給休暇取得と精勤手当の不支給

事例

Aさんは年次有給休暇を1日取得したところ、その月の精勤手当が支給されませんでした。会社の就業規則には「欠勤、遅刻、早退、休暇がない場合に支給」と記載されていました。

問題点

有給休暇取得を理由に精勤手当を不支給とすることは、労働基準法の「有給休暇取得による不利益取扱いの禁止」に抵触する可能性があります。

対処法

  • 労働者: 就業規則の確認と人事部門への問い合わせ
  • 企業: 有給休暇の取得は精勤手当の不支給事由から除外する規定改定

最近の裁判例でも、有給休暇取得を理由とした精勤手当不支給を違法とする判断が示されています。

ケース2: 条件の曖昧さによるトラブル

事例

Bさんは電車遅延による10分の遅刻で精勤手当が不支給となりました。就業規則には「遅刻がない場合」としか記載がなく、不可抗力による遅刻の扱いが明確ではありませんでした。

問題点

精勤手当の支給条件が曖昧だと、労使間のトラブルの原因となります。

対処法

  • 労働者: 遅延証明書の提出と会社の判断の確認
  • 企業: 「不可抗力による遅刻の扱い」を就業規則に明記

このように、精勤手当の条件は具体的かつ明確に規定されていることが重要です。

ケース3: 育児・介護との両立に関するトラブル

事例

Cさんは子どもの看護のための時間単位の有給休暇を取得したところ、精勤手当が不支給となりました。

問題点

育児や介護など、法律で保障された休暇制度の利用を阻害する可能性があります。

対処法

  • 労働者: 育児・介護休業法に基づく休暇であることを説明
  • 企業: 法定の育児・介護関連の休暇を精勤手当の不支給事由から除外

企業は法令順守と従業員の多様な働き方への配慮を両立させることが求められます。

ケース4: 精勤手当の突然の廃止

事例

D社は経営状況の悪化を理由に、長年続けてきた精勤手当を突然廃止しました。

問題点

労働条件の不利益変更となるため、手続きが必要です。

対処法

  • 労働者: 労働組合や従業員代表との協議状況の確認
  • 企業: 十分な説明と代替措置の検討、段階的な移行期間の設定

労働条件の変更は、従業員の理解と納得を得ながら進めることが重要です。

精勤手当に関するトラブルを未然に防ぐためには、就業規則での明確な規定と、制度の目的や条件についての十分な説明・周知が不可欠です。
また、社会情勢や法改正に合わせて、定期的に制度を見直すことも大切です。

まとめ:精勤手当を理解して働き方を見直そう

精勤手当は、多くの企業で採用されている任意の手当制度ですが、その内容や条件は企業によって異なります。この記事では、精勤手当の基本から支給条件、計算方法、税金との関係、さらには導入目的やトラブル事例まで幅広く解説してきました。

ポイントの整理

精勤手当とは欠勤や遅刻、早退せずに勤務した従業員に支給される任意の手当

支給条件一般的には無欠勤・無遅刻・無早退だが、企業により有給休暇や法定休暇の扱いは異なる

計算方法定額方式、基本給連動方式、段階方式など企業独自の方法がある

税金・社会保険給与所得として課税対象となり、社会保険料の算定基礎にも含まれる

導入目的出勤率向上、モチベーション向上、コスト管理など企業側のメリットがある

トラブル事例有給休暇取得との関係や条件の曖昧さなどがトラブルの原因になりやすい

今後の動向

働き方改革や多様な働き方の推進の中で、精勤手当の在り方も変化しています。単に「休まない」ことを評価する制度から、健康管理や生産性向上など、より質的な側面を重視する方向へと変わりつつあります。

また、テレワークの普及により、「出勤」の概念自体が変化している今、精勤手当の条件や支給方法も見直される可能性があります。

次のステップ

精勤手当について理解を深めたら、次のアクションを検討してみましょう:

1.自社の制度確認就業規則や給与規程で自社の精勤手当の詳細を確認する

2.制度の活用条件を把握し、可能な範囲で手当を獲得する働き方を心がける

3.疑問点の相談不明点があれば人事部門や上司に確認・相談する

4.制度改善の提案企業側は時代に合った制度への見直しを検討する

精勤手当は単なる手当ではなく、企業の価値観や従業員の働き方に大きく影響する制度です。労使双方がその意義と影響を正しく理解し、より良い職場環境づくりに活かしていくことが重要です。

最後に、精勤手当に関するご質問やお悩みがある場合は、人事労務の専門家や社会保険労務士にご相談されることをおすすめします。

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