労務ニュース

労働者災害補償保険法改正!

労働者災害補償保険法改正労働者災害補償保険法改正!
~複数事業就業の労働者への保険給付が変わります~


 従来、副業・兼業は原則禁止となっていましたが、多様な働き方が提唱され、また労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは自由であるといった裁判例から、副業・兼業について柔軟な対応が求められるようになり、厚生労働省のモデル就業規則でも、原則禁止 → 原則容認へ内容が変更となりました。また今般の新型コロナウイルスの影響により、企業が休業させている社員へ副業・兼業を勧めるといった動きも出てきています。
労働者災害補償保険法では、複数の事業で働いている(副業・兼業)をしている場合でも、被災事業場での賃金額のみを基礎として保険給付を行ってきました。これが9月から改正となりました。
今月は労働者災害補償保険法の改正を特集します!


◆ とうして改正になったの・・・?

 今までは、複数の会社で就業している場合(副業・兼業)でも、被災した会社での賃金額のみを基礎として保険給付が行われてきましたが、「働き方改革」で多様な働き方が増え、またパートやアルバイトを複数掛け持ちしている労働者について、一つの会社のみの賃金額を基礎とした保険給付では、充分な補償となり得ないことから、副業・兼業等をしている労働者(以下、複数事業労働者)が安心して働くことができるような環境を整備するため、労働者災害補償保険法が改正となりました。3kao.png

 なお、副業・兼業が容認されているといっても、何でもOKという訳ではありません。現在でも就業規則で原則禁止となっている場合は懲戒処分の対象となりますし、副業・兼業をする場合、以下のような義務が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で示されています。

◯ 使用者には安全配慮義務
 使用者は労働者に対して、生命・身体等の安全を確保しつつ労働することが出来るよう必要な配慮をすることが義務となっています。これは複数事業労働者についても同様です。このため、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には副業・兼業を禁止または制限することが出来ます。

◯ 労働者には秘密保持義務
 労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務があります。使用者は業務上の秘密となる情報の範囲や秘密を漏洩しないことについて注意喚起をし、漏洩する場合は副業・兼業を禁止または制限することが出来ます。1kao.png

◯ 使用者・労働者ともに競業避止義務
 労働者は在職中、使用者と競業する業務を行わない義務があります。使用者は労働者が他の使用者に対しての競業避止義務違反となっていないかどうかを確認する必要があります。競業により、自社の正当な利益を害する場合は副業・兼業を禁止または制限することが出来ます。

◯ 労働者には誠実義務
 労働者は使用者の名誉・信用を毀損しないよう誠実に行動することが要請されます。このため、自社の名誉や信用を損なう行為等がある場合は副業・兼業を禁止または制限することが出来ます。

 副業・兼業の禁止又は制限を行う場合は、必ず就業規則に明記することが必要です。

◆ 改正のポイント・・・?!

今回の労働者災害補償保険法の改正ポイントは、

  1. 複数事業労働者(またはその遺族等)への保険給付額は、全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎とすること
  2. 特別加入者も対象とすること(労働者として働きつつ特別加入している場合や複数の事業場で特別加入している場合)2pieces.png
  3. 複数の会社等での労働時間やストレスなど(業務上の負荷)を総合的に評価して労災認定の判断を行うこと

以上となっており、もともと1つの会社でのみ就業している労働者の場合は、特に今回の改正の影響はありません。


それでは、1つ1つ確認していきましょう。


◆ 全ての就業先の賃金額を合算

 被災した時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約がある場合(つまり、同一の事業主の場合は複数事業場で働いていたとしても、該当しません。)、それぞれの事業場で支払われている賃金額を合算し、その合算額を基礎として給付基礎日額が決定となります。業務災害、通勤災害、複数業務要因災害(後述します)でも同様です。また、特別支給金についても同じく合算額が適用されます。


◆ 特別加入者も対象

 特別加入とは、通常労災の適用されない、代表取締役や取締役が労災保険に特別に加入することができる制度です(中小事業主等一定の要件有り)。A社で労働者として働きながら、別の会社で役員となり特別加入していたり、農業の傍ら大工などを行っている場合でそれぞれ特別加入をしている方が該当するため、1つ会社でのみ特別加入している(そのほかで働いていない)場合は、これに該当せず、従来通り加入時(更新時)に選択した給付基礎日額を基に保険給付額が算定されます。


◆ 複数の会社等の業務上の負荷を総合的に評価

 今までは、被災した事業場のみで業務上の負荷を評価、労災認定を判断していましたが、改正により、複数の事業場等の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定判断を行うことになりました。これを「複数業務要因災害」といい、新しい支給事由(労災保険給付の種類が増える)となります。 

従来

・業務災害に関する保険給付
・通勤災害に関する保険給付
・二次健康診断等給付

改正後

・業務災害に関する保険給付
・通勤災害に関する保険給付
・二次健康診断等給付
・複数事業要因災害に関する保険給付

 複数事業要因災害となった場合、もともとそれぞれの事業場で評価した場合には労災認定されないため、いずれの事業場も労働基準法上の災害補償責任は負いません。
 また、複数事業労働者が被災した1つの事業場のみの業務上の負荷を評価して労災認定の判断ができる場合には、「業務災害」として保険給付がされます(複数業務要因災害にはなりません)。この場合でも賃金額は全ての就業先の賃金額を合算しますので、労働者に不利益となることはありません。
なお、この複数業務要因災害の対象となる傷病等は、脳・心臓疾患・精神障害などとなっています。


◆ その他の改正点・・・?

 改正にともない、業務災害用の様式が、業務災害用・複数業務要因災害用へ変更されました。ほかの就業先の有無を記載する欄が追加となり、複数事業労働者の場合、それぞれの就業先について賃金等の記載が必要です。未記入の場合は、複数事業労働者としてみなされません。
 提出先については、事業場を管轄する労働基準監督署が原則ですが、複数事業労働者の場合は、それぞれの事業場を管轄する労働基準監督署のいずれかへの提出となります。
また、今回の改正ではメリット制(労災事故が多いと保険料率があがり、少ないと保険料率が下がる制度)には影響しません。

※メリット制に影響するのは、「業務災害」が発生した場合のみとなります。

人事・労務管理のことなら
閃光舎へお気軽にご相談ください。

お問い合わせ・ご相談はこちらから