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高齢者、複数就業者等に対応したセーフティネットの整備

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雇用保険法、労災保険法の一部改正
高齢者、複数就業者等に対応したセーフティネットの整備

雇用保険や労災保険など、雇用者のセーフティネットに影響する制度に関する法改正の施行がこれから相次いで予定されています。主なものをまとめました。

 雇用保険の被保険者の種類の一つに、高年齢被保険者があります。高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者をいいますが、平成29年1月1日の法改正以前は、高年齢継続被保険者という名称で雇用保険の被保険者であるものの雇用保険料は事業主負担分、労働者負担分ともに免除されていました。
 また、65歳以上の者は新たに雇用保険の適用事業所(以下、適用事業所)に使用される場合でも雇用保険の一般被保険者にはなれませんでした。しかし、法改正以後、65歳以上の労働者が雇用保険の加入要件(週所定労働時間20時間以上、かつ、31日以上の雇用見込み)を満たせば、高年齢被保険者として加入が義務になりました。なお経過措置として、徴収が免除されていた雇用保険料は、4月1日以降は徴収されています。

● 高年齢被保険者の特例(令和4年1月1日施行)
 さらに、去る3月31日に成立した法改正により、令和4年1月1日以降については、65歳以上で2以上の複数事業場で就労する者(以下、複数事業労働者)で次のいずれにも該当するときは、その者が厚生労働大臣に申し出ることにより高年齢被保険者となることができます。

① 2以上の事業主の適用事業所に雇用されるとき
② 一つの事業主の適用事業所における1週間の所定労働時間が20時間未満であるとき
③ 二つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。

ただし、申し出を行う労働者のいずれか一つの事業所における1週間の所定労働時間が一定時間数(5時間を予定)以上でなければなりません。


● 披保険者期間の計算方法の改正(令和2年8月1日施行)
 雇用保険の失業給付を受給するためには、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が12ヵ月以上(会社都合退職等の場合には、離職日以前1年間に6ヵ月以上)必要となります。被保険者期間の計算は、離職日から過去に遡って1ヵ月ごとに区切り、区切られた1ヵ月に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を「被保険者期間1ヵ月」とします。改正により、この計算方法に、新たに労働時間による計算が加わり、被保険者期間が12ヵ月(同6ヵ月)に満たない場合でも、賃金支払いの基礎となった労働時間が80時間以上である場合も被保険者期間1ヵ月とすることになりました。


● 高年齢雇用継続給付の改正(令和7年4月1日施行)
 高年齢雇用継続給付は、定年後60歳以上65歳までの間、再雇用等により引き続き雇用保険の被保険者として働く場合で、賃金が60歳到達時と比べて25%以上減少した場合に、その逓減率に応じてその労働者に直接支給される給付金です。高年齢雇用継続給付には、

① 高年齢雇用継続基本給付金と
② 高年齢再就職給付金
の2種類があります。

①は、60歳等の定年に達した後、失業給付(以下、基本手当)を受給せず定年時と同じ企業等で引き続き働く場合に賃金の逓減に応じて支給されるものです。 ②は、定年等によりいったん失業して基本手当を一部受給した後、再就職した後の賃金の逓減に応じて支給されるものです。今回の改正でいずれの給付金も65歳到達日の属する月までの間、各支給対象月に支払われる賃金の額に、100分の10(当該賃金額が、60歳到達時に離職したものとみなして算定した賃金日額に30を乗じて得た額の100分の64相当額以上であるときは、みなし賃金日額に30を乗じて得た額に相当する額の割合が逓増する程度に応じて100分の10から一定割合で逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た額とすることになりました。


● 育児休業給付の独立(令和2年4月1日施行)
 これまで育児休業給付金は、失業等給付の中の雇用継続給付の一つとして位置付けてきましたが、子を養育するために休業した労働者の生活・雇用の安定を図るため、失業等給付から独立した保険給付とすることになりました。それを踏まえて雇用保険料について、育児休業給付率(1000分の4を雇用保険率で除して得た率)を新たに設定・徴収し、その額を育児休業給付に要する費用に充てることとなりました。


● 複数事業労働者に係る労災保険
 法の一部改正{公布の日(3.31)から6ヵ月を超えない範囲で政令で定める日施行}
 これまで労災保険の目的には、事業主が異なる2以上の複数の事業に使用される労働者の業務上または通勤途上の災害に関する明確な規定はありませんでした。そこで、目的規定が改定され、複数事業労働者に業務上または通勤途上の災害が発生したことによる負傷、疾病、障害または死亡に対して、迅速かつ公正な保護を図るために必要な保険給付を行い、あわせて当該被災労働者の社会復帰の促進、その遺族の援護、安全および衛生の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを明確化することとなりました。
 今後、複数事業労働者の2以上の複数事業の業務または通勤を要因とする負傷、疾病、障害または死亡に関する保険給付が新たに創設されることになります。
 また、労災保険に係る保険給付のうち現金給付(傷病補償年金、障害補償年金、遺族補償年金、葬祭給付等)の基礎となる給付基礎日額は、原則として、労働基準法の平均賃金をもとに算定します。現行法の下では、複数の事業場で働きそれぞれから賃金を受け取っている労働者が業務災害にあった場合には、それが発生した事業場から支払われていた賃金をもとに平均賃金が算定され、給付基礎日額となります。しかし労働者が複数の事業場から賃金の支払いを受けている場合、通常は合算した額をもとに生計を立てていると考えられ、被災した一事業場のみの稼得能力の填補では生計が危うくなります。
 そこで、複数事業労働者の業務上の事由または通勤による負傷、疾病、障害または死亡により保険給付を行う場合には、当該労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額の合算額を基礎として保険者たる政府が算定する額を給付基礎日額とすることとなりました。
 そのほか、セーフティネット整備に関する法改正には図のようなものがあります。


(厚生労働省:雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要)

1.高齢者の就業機会の確保及び就業の促進(高年齢者雇用安定法、雇用保険法)
 ① 65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置(定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれか)を講ずることを企業の努力義務にするなど、70歳までの就業を支援する。【令和3年4月施行】

 ② 雇用保険制度において、65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて高年齢雇用継続給付を令和7年度から縮小するとともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置付ける。【令和7年4月施行・令和3年4月施行】

2.複数就業者等に関するセーフティネットの整備等(労災保険法、雇用保険法、労働保険徴収法、労働施策総合推進法)
 ① 複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しを行う。【公布後6月を超えない範囲で政令で定める日】
 ② 複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について、雇用保険を適用する。【令和4年1月施行】
 ③ 勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算入に当たり、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する。【令和2年8月施行】
 ④ 大企業に対し、中途採用比率の公表を義務付ける。【令和3年4月施行】

3.失業者、育児休業者等への給付等を安定的に行うための基盤整備等(雇用保険法、労働保険徴収法、特別会計法、労災保険法)
 ① 育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付ける。【令和2年4月施行】
 ② ①を踏まえ、雇用保険について、以下の措置を講ずる。【令和2年4月施行】
 ア:育児休業給付の保険料率(1,000分の4)を設定するとともに、経理を明確化し、育児休業給付資金を創設する。
 イ:失業等給付に係る保険料率を財政状況に応じて変更できる弾力条項について、より景気の動向に応じて判定できるよう算定方法を見直す。
 ③ ②の整備を行った上で、2年間(令和2~3年度)に限リ、雇用保険の保険料率及び国庫負担の引下げ措置を講ずる。【令和2年4月施行】
  ※保険料率1,000分の2引下げ、国庫負担本来の55%を10%に引下げ
 ④ 雇用保険二事業に係る保険料率を財政状況に応じて1,000分の0.5引き下げる弾力条項について、更に1,000分の0.5引き下げられるようにする。【令和3年4月施行】
 ⑤ 保険給付に係る法令上の給付額に変更が生じた場合の受給者の遺族に対する給付には、消滅時効を援用しないこととする。【令和2年4月施行】

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