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台風など自然災害にともなう従業員の労務管理と対応策

自然災害にともなう労務管理と対策 

台風など自然災害にともなう従業員の労務管理と対応策

 大型台風の襲来が相次いだ今秋。自然災害により事業活動が脅かされた場合の対策の必要性を改めて認識させられました。問題は労務管理にも及びます。基本的な考え方を見ていきます。
台風15号の爪痕も癒えない中で台風19号が上陸。河川の氾濫による浸水などで操業停止や営業中止などにより被災地企業はもとより、被災地に関連する企業の事業活動にも多大な影響を及ぼしています。
台風や地震などに被災した企業にとっては、事業の休止や廃止を余儀なくされ、従業員への対応で検討しなければならないこともあります。


◆ 事業活動の一時休止と賃金の保障 ◆

 台風や地震などの自然災害により、被災地の企業や関連する企業が一定期間、工場の操業停止や店舗営業の休止などを余儀なくされた場合、やむを得ず労働者を休業させざるを得ないことがあります。このような場合、休業に伴う労働者の賃金保障はどうすればよいのでしょうか。労働基準法では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」(第26条)と定めています(休業手当の支払義務)。しかし、台風や地震といった天災事変は不可抗力であり、「使用者の責に帰すべき事由」には該当しません。 したがって、自然災害により事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、原則として、休業手当の支払義務はないことになります。
 では、被災地企業と関連する被災地以外の企業や、被災地企業が事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合で、道路などの輸送経路が被害を受け、仕入れ・納品ができないなどの理由で労働者を一定期間休業させる場合はどうでしょうか。この場合は原則として、休業手当の支払義務が生じることになりますが、代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者として休業回避のために果たした具体的な努力などを総合的に勘案し、判断することになります。
 また、被災して一定期間休業する場合であっても、そこで働く被災労働者の生活にも配慮しなければなりません。労働基準法では、労働者が出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求した場合は、使用者は、賃金支払期日前であっても既に行われた労働に対しては賃金を支払わなければならない、と定めています(第25条)。この規定は自然災害発生時にも当然適用され、休業手当の支払いの必要があるか否かを問わず、労働者から請求があれば、被災前の既往労働分に対する賃金の支払義務が生じます。
 なお、労災保険に加入している企業で、被災したことにより、事業活動を停止し、再開の見込みがなく、労働者への賃金や退職金の支払いが不能となるなど事実上倒産に至った場合には、国が事業主に代わって未払賃金の一部を立替払いする「未払賃金立替払制度」を利用することができます。この制度を利用するには、労働基準監督署長の認定が必要ですので、最寄りの労働基準監督署に相談してみましょう。


◆ 遅刻・早退、欠勤と年次有給休暇 ◆

 被災地でなくとも、自然災害による公共交通機関の乱れにより、労働者が欠勤せざる得なかったり、遅刻・早退したりする場合があります。このような場合の賃金の取り扱いは、会社の定める就業規則によります。原則として、早退などを命じた場合以外の時間については、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき時間相当分を控除することは違法ではありません。しかし、こうした場合の遅刻の賃金控除は酷では、ということもありますので「遅延証明書」を提出することで、遅刻扱いとはせず、賃金控除しないとする会社も多いでしょう。
 また、前述のような事情による欠勤について、年次有給休暇の取得を一方的に命じることはできません。年次有給休暇は、原則として、労働者の請求を前提として付与するものです。年次有給休暇の取得とする場合には労働者と話し合わなければなりません。


◆ 復興のための時間外労働・休日労働 ◆

 労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合、会社は「時間外及び休日労働に関する協定」(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。しかし、災害その他避けることができない事由により時間外・休日労働をさせる必要がある場合は、36協定によるほか、当該協定がない場合であっても所轄労働基準監督署の事前の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができます(第33条)。 したがって、36協定を締結していない場合であっても、被災した工場や店舗などの早期復旧のために労働者に臨時的な時間外労働や休日労働をしてもらう場合、または被災地域外の他の企業が被災地企業の協力要請に基づく支援に伴い時間外労働や休日労働を行う場合には、労働基準監督署に事前の許可または事後の届出をしておくことが必要です。


◆ やむを得ない整理解雇は認められるのか? ◆

 自然災害が起こった場合でも、解雇は容易には認められません。労働基準法では天災事変その他やむを得ない事情で事業継続不可能であることについて労働基準監督署の認定を受ければ、解雇制限が解除され、または予告なく解雇できる旨を定めています(第19条但書、第20条但書)。 しかし、これは実際には不可抗力や突発的なもの、事業主として雇用継続の努力をし尽してもなお、やむを得ないものであり、事業の全部または大部分が崩壊し事業が相当程度の継続が不可能、といった場合に限られます。安易に解雇すると、客観的に合理的な理由を欠く解雇として解雇権の濫用を問われることになります。この場合、「整理解雇4要件」(人員整理の必要性、解雇回避努力義務の履践、被解雇者選定の合理性、解雇手続の妥当性)などを考慮し、判断されます。有期契約労働者であっても、契約期間中の解雇については無期契約労働者よりも、むしろ厳しい要件が課される点にも注意が必要です。


◆ 雇用助成金の活用はハローワークに相談を ◆

 自然災害発生時には国や地方自治体からの補助金や助成金が受けられる場合があります。その一つに雇用保険制度からの助成として「雇用調整助成金」があります。景気低迷により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、その雇用する労働者を対象に一時的に休業などを行い、労働者の雇用の維持のために支払う休業手当、賃金などの一部を助成するものです。今回の台風の影響で経営が悪化した企業への特別措置として、厚生労働省は支給条件を緩和しています。
 最寄りのハローワークに相談し、活用することです。

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