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労働行政運営方針に見る労働基準行政の重点事項

労働行政運営方針に見る労働基準行政の重点事項ほか
労働行政運営方針に見る労働基準行政の重点事項
    労働環境の整備や商習慣の見直しで働き方改革を促進

厚生労働省が公表した「平成31年度地方労働行政運営方針」のなかから、今年度の労働基準監督署の取り組み対象となる主な事項について紹介します。

 厚生労働省は去る4月1日、「平成31年度地方労働行政運営方針」(以下、運営方針)を策定・公表しました。
 これはその年度の労働行政を運営するにあたっての重点施策を示したものです。各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局内の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとなります。
 したがって、運営方針から、今年度、労働基準監督署がとくに何を重点事項として、事業所の監督・指導などの行政活動を展開しようとしているのかを知ることができます。企業にとっては労務管理体制の方針を検討する際の資料として活用することができます。
 運営方針では重点施策として、次の5つを掲げています。

①働き方改革による労働環境の整備、生産性向上の推進等
②人材確保支援や多様な人材の活躍促進、人材投資の強化
③労働保険適用徴収拒当部署の重点施策(労働保険の未手続事業一掃対策を推進するとともに、労働保険料等の適正徴収等を実施)
④毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付
⑤東日本犬震災からの復興支援

 ここでは、これらの施策のなかから労働基準監督署の取り組み対象となる主な内容について取り上げることとします。


◆ 労働環境の整備や生産性向上を支援 ◆

【1】働き方改革を推進するために、すべての労働基準監督署に編成した「労働時間改善指導・援助チーム」のうち、「労働時間相談・支援班」では、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない場合が多いと考えられる中小企業・小規模事業者に対して、説明会の実施や個別訪問を行い、「働き方改革関連法による改正後の労働基準法」などの周知を中心としときめ細かな相談・支援などを行うとしています。
 あわせて、働き方改革に取り組む中小企業・小規模事業者の人材確保を支援するために、一定の雇用管理改善をした場合や、生産性を高めながら労働時間の縮減に取り組む場合に、助成金を支給するとしています。

【2】長時間労働の是正をはじめとする労働者が健康で安全に働くことができる職場環境の整備などのための取り組みとして、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヵ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場、および長時間にわたる過重な労働による過労死などに係る労災請求が行われた事業場に対する監督・指導を実施し、その際には改正労働基準法の内容を踏まえた時間外労働の上限規制などに係る遵守の徹底を図るとしています。
 したがって、36協定で特別条項を定めている事業場については、監督・指導が入りやすいといえるでしょう。

【3】改正労働安全衛生法の内容を踏まえて、労働時間の状況の把握については、
 ① 管理監督者や裁量労働制の適用者を含めたすべての労働者が対象となること、
 ② 労働者への通知が必要となること、
 ③ 産業医の面接指導の対象要件について1ヵ月あたりの時間外労働・休日労働が100時間を超えた者から80時間に拡大されたこと、
 ④ 研究開発業務従事者で月100時間超えによる医師の面接指導については労働者からの申し出が不要とされていること
などについて、重点的に指導を行うとしています。
 そして、違法な長時間労働や過労死などが複数の事業場で認められた企業経営者に対する労働局長による指導の実施および企業名の公表の取り組みが徹底されます。
 あわせて、新たに明確化された裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業経営者に対する労働局長による指導の実施・企業名の公表の取り組みを適切に実施していくとしています。
 なお、これらの監督・指導などは、「労働時間改善指導・援助チーム」のうち労働時間改善特別対策監督官で編成する「調査・指導班」により実施されます。


◆ 長時間労働につながる商習慣の見直しも指導 ◆

 今年4月1日から、大企業に時間外労働の上限規制が適用されました。これにともない、発注者である大企業がこの上限規制を遵守することや、年次有給休暇の5日の確実な取得(時季指定)のしわ寄せとして、中小企業などに対して短納期などの無理な発注が行われることが懸念されます。
 改正労働時間等設定改善法では、ほかの事業主との取り引きにおいて長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないように配慮することが事業主の努力義務となっています。
 これまでも厚生労働省および中小企業庁では、中小企業の労働基準関係法令違反の背景には、極端な短納期発注などに起因する下請代金支払遅延等防止法などの違反が疑われることを鑑みて、公正取引委員会を含む関係行政機関との連携を図り、その指導強化を図ってきたところです。

 今回の運営方針では、下請代金支払遅延等防止法などの違反が疑われる場合には中小企業庁、公正取引委員会および国土交通省に確実に通知するとしています。


◆ 年次有給休暇の取得を促進 ◆

 働き方・休み方の見直しに向けた取り組みには、企業の経営トップの意識改革やリーダーシップが重要であることから、長時間労働を前提としたこれまでの職場慣行を変え、定時退社や「ゆう活」の取り組み、勤務間インターバル制度の導入促進、短納期発注を抑制し納期の適正化を図ること、年次有給休暇の取得促進に取り組むように働きかけを実施するとしています。
 そのために、改正労働時間等設定改善指針の周知徹底を図り、企業の働き方・休み方の見直しを促すとしています。
 また、勤務間インターバル制度の導入促進を進め、長時間労働が懸念される業種などに対して当該制度を導入する際に参考となるようなマニュアルを作成するとしています。
 年次有給休暇の取得促進を図るための取り組みとしては、10月の「年次有給休暇取得促進期間」に加えて、連続休暇を取得しやすい夏季、年末年始およびゴールデンウィークの時季に集中的な周知・広報を行うほか、地域の特性を生かした休暇取得促進のための環境整備などを推進するとともに、地方公共団体と連携して、学校休業日に合わせた年次有給休暇の取得促進を図るとしています。

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