労務ニュース

労働者の健康情報を管理する取扱規程の策定

労働者の健康情報を管理する取扱規定の策定
労働者の健康情報を管理する取扱規程の策定

      -準備・検討・策定が急務

 労働者の健康状態は、配慮が必要な個人情報にあたります。その適切な情報管理・運用を図るため、企業に対して取扱規程の策定が求められます。

※トピック記事は2019年1月末時点のものです。新元号への改元を考慮し、西暦表記で統一しています。


働き方改革関連法では、労働安全衛生法も一部改正され、産業医や産業保健機能の強化が図られたことにともない、業種・規模を問わず従業員の健康管理に関する情報の取扱規程の策定が求められることになります。

◆ 労働安全衛生法に情報管理の規程が新設 ◆

 労働安全衛生法に基づき会社が実施する健康診断などの従業員の健康確保措置や、任意に行う従業員の健康管理活動を通じて得た、個々の心身の状態に関する情報は、個人情報保護法に規定する「要配慮個人情報」(第2条第3項)です。
 そのため会社としては、その情報により労働者が不当な差別、偏見その他の不利益が生じないよう、その取り扱いにとくに配慮し、労働者が安心して産業医などによる健康相談などが受けられるようにしなければなりません。また、労働者の健康確保措置が十分に行えるよう、必要な心身の情報を収集できるようにする必要があります。
 そこで、労働安全衛生法に「心身の状態に関する情報の取扱い」に関する規程(第104条)が新設され、「労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りではない」(第104条第1項)と定められました。この改正を受けて昨年9月、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」が公表されました。指針では、健康情報の取り扱いに関する原則を明らかにするとともに、企業が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用などを示しています。

◆ 取扱規程に定めるべき事項と策定方法 ◆

 指針が示す「取扱規程に定めるべき事項」は、次の9項目です。

 ① 心身の状態の情報を取り扱う目的および取扱方法
 ② 心身の状態の情報を取り扱う者およびその権限ならびに取り扱う心身の状態の情報の範囲
   (下記"心身の状態の情報の範囲"参照)
 ③ 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法および本人同意の取得方法
 ④ 心身の状態の情報の適正管理の方法
 ⑤ 心身の状態の情報の開示、訂正等(追加および削除を含む)および使用停止等(消去および第三者への提供の停止を含む)の方法
 ⑥ 心身の状態の情報の第三者提供の方法
 ⑦ 事業承継、組織変更にともなう心身の状態の情報の引き継ぎに関する事項
 ⑧ 心身の状態の情報の取り扱いに関する苦情の処理
 ⑨ 取扱規程の労働者への周知の方法

 なお、②については、「個々の事業場における心身の状態の情報を取り扱う目的や取り扱う体制等の状況に応じて、部署や職種ごとに、その権限及び取り扱う心身の状態の情報の範囲等を定めることが適切である」としています。
 策定にあたっては衛生委員会または安全衛生委員会を活用して、労使関与のもとで検討・策定し、それを共有する必要があるとしています。衛生委員会をもたない常時使用労働者数50人未満の小規模事業場では、関係労働者の意見を聴く機会を活用し、労働者の意見を聴いたうえで取扱規程を策定し、共有すべきとしています。また、取扱規程に関しては事業場単位ではなく、企業単位での策定でも問題ないとしています。
 そのほか指針では、情報の適正な取り扱いの体制整備、運用などについても具体的に示しています。
今後は取扱規程の雛形なども整備される見込みです。
 適用は2019年4月1日ですので、ほかの法改正に基づく就業規則の見直しと同時に規程の策定に着手しなければなりません。


【心身の状態の情報の範囲】


★ 心身の状態の情報の分類-1 ★
 .労働安全衛生法令に基づき事業者が直接取り扱うこととされており、労働安全衛生法令に定める義務を履行するために、事業者が必ず取り扱わなければならない心身の状態の情報

 1-1)上記の分類に該当する心身の状態の情報の例
  a.健康診断の受診・未受診の情報
  b.長時間労働者による面接指導の申出の有無
  c.ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者による面接指導の申出の有無
  d.健康診断の事後措置について医師から聴取した意見
  e.長時間労働者に対する面接指導の事後措置について医師から聴取した意見
  f.ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者に対する面接指導の事後措置について医師から聴取した意見

 1-2)心身の状態の情報の取扱いの原則
 すべての情報をその取り扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、事業者などが取り扱う必要がある。ただし、それらに付随する健康診断の結果などの心身の状態の情報については、.の取り扱いの原則に従って取り扱う必要がある



★ 心身の状態の情報の分類-2 ★
 .労働安全衛生法令に基づき事業者が労働者本人の同意を得ずに収集することが可能であるが、事業場ごとの取扱規程により事業者などの内部における適正な取り扱いを定めて運用することが適当である心身の状熊の情報

 2-1)上記の分類に該当する心身の状態の情報の例
  a.健康診断の結果(法定の項目)
  b.健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のものに限る)
  c.長時間労働者に対する面接指導の結果
  d.ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者に対する面接指導の結果

 2-2)心身の状態の情報の取扱いの原則
 事業者などは、当該情報の取り扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、取り扱うことが適切である。そのため、事業場の状況に応じて、「情報を取り扱う者を制限する」「情報を加工する」など、事業者などの内部における適切な取り扱いを取扱規程に定め、また、当該取り扱いの目的および方法などについて労働者が十分に認識できるよう、丁寧な説明を行うなどの当該取り扱いに対する労働者の納得性を高める措置を講じたうえで、取扱規程を運用する必要がある



★ 心身の状態の情報の分類-3 ★
 .労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことについて規定されていないため、あらかじめ労働者本人の同意を得ることが必要であり、事業場ごとの取扱規程により事業者などの内部における適正な取り扱いを定めて運用することが必要である心身の状態の情報

 3-1)上記の分類に該当する心身の状態の情報の例
  a.健康診断の結果(法定外項目)
  b.保健指導の結果
  c.健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のものを除く)
  d.健康診断の精密検査の結果
  e.健康相談の結果
  f.がん検診の結果
  g.職場復帰のための面接指導の結果
  h.治療と仕事の両立支援などのための医師の意見書
  i.通院状況など疾病管理のための情報

 3-2)心身の状態の情報の取扱いの原則
 個人情報の保護に関する法律に基づく適切な取り扱いを確保するため、事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要がある


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