労務ニュース

今月の相談 内定期間中の研修参加の強制と賃金

労務のお悩み相談室 Q&A

今月の相談 内定期間中の研修参加の強制と賃金

【 質 問 】
 今年4月の入社にともない、採用内定した学生の入社前研修を実施すべく、内定者に案内を出そうと思いますが、研修への参加を強制することはできますか。また、研修参加者には賃金を支払わなければならないのでしょうか。

【 回 答 】
 企業によっては今春就職予定の新卒内定者に対して入社前の期間中に社会人としての基礎的なマナーや会社の仕組みなどを研修するケースが多くあります。その時期として多いのが入社目前の2月、3月です。
 採用内定とは、会社と内定者の間で採用・入社の意思確認により労働契約が成立しているものの、入社までの一定の期間にやむを得ない事由が発生した場合には内定を取り消しすることがあるという、いわば「入社予定日を就労開始日とする始期付きの解約権留保付き労働契約」(始期付・解約権留保付労働契約)のことをいいます(大日本印刷事件 最高裁二小 昭54.7.20判決)。


 ● 入社前の研修参加を強制するには

 内定が「始期付・解約権留保付労働契約」である以上、内定者が実際に内定先企業の「指揮命令下」に置かれるのは「入社日」以降になります。 したがって、本来、企業が内定者に対して研修への参加を強制することができるのは、入社日以降に限られます。
 そのため、内定期間中に研修参加を強制できるか否かは、内定時にどのような合意をしていたかによります。参加が任意の場合には、内定者が参加義務を負うことはなく、企業は参加を強制することができません。参加を強制する場合には、内定時にきちんと説明し、承諾を得ておく必要があるでしょう。
 なお、その場合でも、内定者が学業への支障など合理的な理由で不参加を申し出たときなどは、まだ学生であるため、企業は研修への参加義務を免除せざるを得ません。また、参加が任意の場合でも、内定者に不参加による不利益が生じるようなことがあれば、実質強制となるので注意しなければなりません。


 ● 強制参加の研修における賃金の支払い

 入社前研修を強制する場合、企業はその「指揮命令権」に基づいて内定者に対して参加を命じていることになります。入社前研修とはいえ、使用者の指揮命令下に置かれている時間については、実際に業務に従事している時間でなくても、すべて労働時間として賃金が発生するというのが過去の最高裁の判例です(三菱重工業長崎造船所事件:最高裁判決:平成12年3月9日)。
 よく内定期間中の研修に対して、交通費および食事代のみを支給することがありますが、強制参加となる場合は、注意が必要です。過去の裁判例から考えると、入社予定日以降に受けとるであろう初任給を基に、時給換算した賃金を支払うべきと考えられますが、少なくとも参加時間に応じて、拘束した時間に対しては最低賃金以上の賃金は支払わなければなりません。


         \今月のチェックポイント/
入社前の研修参加を強制するには内定時の承諾が重要です。
 強制参加の研修では相応の賃金を支払う必要があります。

人事・労務管理のことなら
閃光舎へお気軽にご相談ください。

お問い合わせ・ご相談はこちらから