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注目の2つの労働事件の最高裁判決が与える影響

8月表紙

TOPICS-1

長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件

有期契約労働者と正社員の賃金格差をめぐる注目の2つの裁判で、一部格差は不合理であるとする最高裁判決が下されました。
今後、有期契約労働者の賃金を検討する際の判断基準として影響が予想されます。


 正社員と有期契約労働者との待遇の格差をめぐる注目すべき2つの労働事件(「長澤運輸事件」「ハマキョウレックス事件」)の最高裁判決が6月1日同日に言い渡されました。
「同一労働同一賃金」に関する法改正が予定されていることもあり、この2つの判決の内容は今後、企業の有期契約労働者の賃金などの処遇を検討するにあたり、大きな影響を与えるものです。

◆ 定年後の再雇用の格差「長澤運輸事件」 ◆

「長澤運輸事件」は、定年退職後に有期労働契約で嘱託乗務員として再雇用されたトラック運転手3名が、定年前と同じ業務(セメントの運輸)に従事しているにもかかわらず、定年前と再雇用後で賃金総額が2割以上減額されたことは正社員との処遇格差につき労働契約法第20条に反し、不当として訴えたものです。

 最高裁判決のおもなポイントを要約すると次の通りです。

①定年後の継続雇用において、職務内容やその変更の範囲等が同一であっても相当程度賃金を引き下げることは広く行われており、2割以上減額されたことは、第20条に定める「その他の事情」も勘案すれば不合理であるといえないこと

②休日以外のすべての日に出勤した者に支払われる「精勤手当」を嘱託社員に支給しないのは不合理であり、それを含めた時間外手当の再計算を求めたこと

 この判決から、今後、定年後の継続雇用にともなう労働条件の変更は、職務内容およびその範囲または責任の程度などに応じて賃金項目ごとに個別に判断する必要が生じることになります。
 給与体系の変更、基本給や賞与についてのある程度の格差は宣言されますが、諸手当に関する格差は個別に判断され、あまりに格差が犬きいと企業にとって訴訟リスクが高まるものと思われます。


◆ 契約社員の諸手当の格差「ハマキョウレックス事件」 ◆

「ハマキョウレックス事件」は、契約社員である運転手が正社員と同じ仕事内容にもかかわらず、正社員に支給されている6種類の手当(無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当)が契約社員に支給されないのは労働契約法第20条に反して不合理であるとして訴えたものです。
 最高裁は、住宅手当を契約社員に支給しないことは不合理とは認められないとしました。その理由として、職務の内容は同じだが、正社員には出向の可能性や等級役職の格付けにより、将来、企業の中核を担う人材として登用される可能性があるので、契約社員とは職務内容および配置の変更の範囲が異なるとしています。
 一方で、住宅手当以外の手当のうち、第二審で労働契約法第20条違反とされた4つの手当に加えて皆勤手当についても、「出勤を確保するため皆勤を奨励する趣旨で支給されているもので、正社員と契約社員の職務の内容が同じであり、出勤を確保する必要性は両者で変わらない」として、その差額全額を損害賠償請求として認めました。
 この2つの事件は今後、正社員と有期契約労働者との待遇の格差をめぐる争いの基本的な判断基準となるものです。賃金格差はある程度容認されるものの、諸手当の差違については合理的な理由が求められることになるでしょう。

賃金格差に最高裁が判例
今回の裁判はともに、深刻な人手不足の状況にある運輸業界の運転手の賃金をめぐる労働事件ですが、その最高裁判決は今後、さまざま業界で有期契約労働者の賃金格差などを考えるうえでの判断基準として影響を与えそうです。

労働契約法第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

不合理かどうかの判断ポイント
以下の①~③を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。
① 職務の内容
(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)労働者が従事している業務の内容および当該業務に伴う責任の程度。

② 当該業務の内容及び配置の変更の範囲
今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化など(配置の変更をともなわない職務の内容の変更を含む)の有無や範囲。

③ その他の事情
合理的な労使の慣行などの諸事情を想定。

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